過去の自分との距離感

 今、彼は確かに朗らかだ。しかし、言動に根付く考え方や人間的な芯は以前から持っていたものと変わらない。“新天地だけれど地続き”という印象を受ける。

「俺自身はそうしようとか全く考えてないんです。もしこれが20代だったら違ってたのかもしれないけど、40代で今さら生まれ変わったような感じにしてもな。自然に嘘なくやれたらいい。そうさせてくれている周りに感謝ですね」

 過去の捉え方もそうだ。

「未来も考えないけど、過去を振り返ることもしない。過去の俺って、俺だけど俺じゃないんです。俺は今ここにいるから。今までの自分を否定するわけでもないし見ないようにしてるわけでもなく、冷静に、距離を取って見てます。

 やってきたことで恥ずかしいことはひとつもないけど、実際の俺は前だけを向いて今を進みたい。目の前のことに集中して、『今、楽しい!』とか『よっしゃ!』って思う瞬間を積み重ねていきたい」

 孤高の才人と思われがちだが、新設したファンクラブではマイペースに発信も楽しんでいる。

「やっぱり自分の中でファンの存在って大きいんですよ。自分だけじゃ本当に何もできないなって」

 ただ悠然と在る草木のように、あるいは軽やかに舞う蝶のように、彼は今日を生きて世界を魅了する。

Their Seeds

過去からも未来からも常に自由でいること。
大切な人たちとともに。

森田 剛(もりた・ごう)

1979年2月20日生まれ、埼玉県出身。1995年、V6のメンバーとしてデビューし、2021年11月1日まで活動。映画や舞台で俳優としても活躍する。舞台出演作に「金閣寺」「ビニールの城」「空ばかり見ていた」「FORTUNE」など。映画主演作に『ヒメアノ~ル』、最新作に『前科者』がある。

森田 剛のChronicle
新たな道のはじまりとこれからのこと

≪2021年≫
・11月2日
事務所「MOSS」始動

・12月29・30・31日
MOSSが企画・製作を行った主演短編作品『DEATH DAYS』をYouTube「MOSS CH」に公開

≪2022年≫
・1月28日
映画『前科者』公開

・3月12日
劇場版への再編集を経た主演映画『DEATH DAYS』が全国の一部劇場にて順次上映予定

・5月10日~
舞台「『みんな我が子』-ALL My Sons-」に出演予定

映画『DEATH DAYS』

生まれた時から死ぬ日を知っている世界で、男の数奇な人生を描く。森田は20歳から40歳までを演じた。劇場版への再編集を経て公開。

●企画・製作:MOSS、監督・脚本:長久 允


舞台「『みんな我が子』-ALL My Sons-」

アーサー・ミラーの戯曲。2年ぶりの舞台出演となる森田は、戦争から戻らない弟の婚約者に惹かれる長男クリスを演じる。Bunkamuraシアターコクーンほかで上演予定。

●演出:リンゼイ・ポズナー

あたらしい暮らし
楽しい暮らし

2022.05.05(木)
Text=Mami Naruta
Photographs=Tim Gallo
Styling=Koji Oyamada
Hair & Make-up=TAKAI
Plants decoration=Yasutaka Ochi (DILIGENCE PARLOUR)

CREA 2022年春号
※この記事のデータは雑誌発売時のものであり、現在では異なる場合があります。

この記事の掲載号

あたらしい暮らし 楽しい暮らし

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「CREA」2022年春号の特集は、「あたらしい暮らし 楽しい暮らし」。激動する時代の中“楽しい暮らしの正解”はなくて、きっとそれは百人百様。でも人生100年時代となり、キャリアがマルチステージ化していくと言われる世界を、自分らしく楽しむためには、自分の中に「種」を持っていたい。今すぐじゃなくても、ちょっと先の未来に芽が出るような、小さくても、強い種を――。