先代のラブとの出会いと“石”のはなし

――以前、飼っていたラブちゃんはどういういきさつで、福徳さんのもとへやってきたんですか?

 初めて飼った犬やったんですけど、高校3年生の時やったかな。母親が実家の近所にあった盲導犬の訓練をしてるところに行って「譲ってもらえる子はいませんか?」って聞いたら、「いますよ」って言われて。

 パピーウォーカー(注:社会性を育むために、盲導犬になる候補の犬を迎えるボランティアのこと)に出される前、赤ちゃんの段階で受ける性格判断みたいなんがあって。ラブはそれで盲導犬になられへんって判断された子やったんです。

 僕もその場にいたんですけど、買い取ったんでしょうね。突然、ちっちゃいラブラドールが現れました。家に来たばかりの頃はちょっと戸惑ってたんですけど、ラグビー部の合宿に1週間くらい行って帰ってきたら、めっちゃデカなってて。こんなに成長すんねやってびっくりした瞬間、ぐっと愛情が湧いてきました。

――そこからは自分でお世話をしたり?

 基本、散歩させてたのは僕でしたね。家の周りが山で誰もいないところだったので、リードをつけずに走らせて……20年前の話です。

 犬の走りは予想がつかないこともありますけど、僕がお気に入りの石さえ持っていれば、ラブはどこにも行かない。山奥にバーっと走っていったとしても「石!」って言うたら絶対帰ってくる、石が大好きなラブラドールだったんです。

うちの子ベストショット②

「最高記録は石を5個くわえた。」

――(笑)。石が好きだというのは、いつ判明したんですか。

 1歳くらいの時、川のそばで一緒に遊んでたんです。最初は伸びるタイプのリードをつけて遊ばせてたんですけど、石が好きなんじゃないかと気づいて試しにリードを外してみたら、どこにも行かない。少し遠くへ行っても石を持ったら必ずそばまで戻ってきたので、これがあれば大丈夫なんやなって。

――石がリード代わりになっていたんですね。

 そうなんです。ラブラドールって、めっちゃ賢いですよね。

2021.11.26(金)
文=高本亜紀
撮影=橋本篤
写真=福徳秀介