うちの子ベストショット③

「山の奥に入り込んで、戻ってきたら、えらいこっちゃ。」

――高校を卒業して、大学在学中にNSCへ入学。卒業後、大阪にある吉本の劇場を中心に活動されていましたが、当時は実家から通われていたんですか?

 そうですね。仕事が忙しくなって東京へ行く機会が増えたり、大阪におる時間が多くなったりしても、15分の散歩のためだけに実家へ帰ってました。帰ると、ラブが喜んで迎えてくれるのがめっちゃ嬉しかったんです。

――ラブちゃんはどれくらいで亡くなられたんですか。

 2011年……2012年やったかな。2日間くらい、調子が悪くて。それまでも何回かヤバいなと思う瞬間はあったんですけど、今回はマジでヤバい。もうあかんなっていうくらい具合が悪くなってしまったんです。

 その日の朝、京都の劇場へ向かったんですけど、家を出る前にずっと寝たきりでふがふが言うてたのが心配で、舞台出演後、ゲスト出演する予定やったアインシュタインのラジオをサボりました。(相方の)後藤に「俺、ラジオ行かんわ」って伝えて……後藤も行かんかったから、ゲストが急になくなったはずです。アインシュタインは覚えてないでしょうけど。

――ペットは大事な家族の一員ですから、重篤な状態にある愛犬のそばにいたい気持ちはすごく理解できます。

 帰って2時間くらいで死んで……間に合ってよかった! って思いました。死んだ瞬間、全身の力が抜けて、めっちゃごっついウンチしてたんです。立派な1本で、最後まで笑わせてくれるんやと思ったのを覚えてます。

 死ぬとすごいスピードで死後硬直が始まるんですけど、走るのが好きやったからせっかくなら走ってるポーズで固まらせてあげたいと思って、少し体を動かしました。

 ほんまにめちゃくちゃ悲しくて……。

 次の日は奇跡的に休みやったんで霊園に連れていけたんですけど、その翌日は東京で『フットンダ』の収録やったんです。収録中、泣きそうになるのをグッと我慢して。大喜利を考えようとはするんですけど、涙をこらえるのに必死で、結局その日はなんにもできなかったですね。

2021.11.26(金)
文=高本亜紀
撮影=橋本篤
写真=福徳秀介