「こんなにかっこいいキャラクターをやらせてもらえるんだ(笑)」

――最新作『鹿の王 ユナと約束の旅』では、謎の病の治療法を追い求める天才的な医師・ホッサルを演じました。

 最初にお話をいただいたとき、「僕がアニメーションのキャラクターの声をやるの? 大丈夫かな?」と思いました。しかも、「こんなにかっこいいキャラクターをやらせてもらえるんだ!?」と(笑)。どうやってキャラクターと声を作っていこうかな、と考えながらやっていきました。

――ハリウッド映画の日本語吹き替え版の経験はありますよね。役に立ちましたか?

 そうですね。作品にもよると思いますが、僕はあまりキャラクターやテンションを作りすぎない方が良いのではないかと思ったんです。なぜかというと、キャラクターとはいえ、本来、同じ人間が話しているので、吹き替えだからといってキャラクターを作って、声を乗せなきゃいけない決まりは、ないのではという気がしていて。だから普通に、普段話しているみたいに話したいなと思ったのは、今回の声優というお仕事をやらせていただいたときも同じでした。

――実際、ホッサルの声をどうやって自然に出していかれたんですか?

 最初は台本の情報で考えていたんですけど、その後、キャラクターのビジュアルを見せていただいて。それから自然と「あ、こういうニュアンスの声なのかな?」みたいなイメージが、自分の中ですごく膨らんでいきました。ビジュアルとキャラクターの雰囲気から聞きたい声って、きっとあると思うんです。だから、自分がこのキャラクターからどういう声を聞きたいかを考えながら、調整していった感じです。

 実際のアフレコでは、常に僕と一緒に行動しているマコウカン役の櫻井トオルさんと、台詞のやり取りをしていたんです。そうやって会話をすると、また自分のお芝居も変わっていくんですよね。なので、やりながらちょっとずつ、みんなが描いているホッサルというキャラクターにピントを合わせていくという、すごく繊細な作業でした。

――ホッサルの人物像としては、どういうキャラクターだと感じましたか?

 かっこよくて、何事にも冷静に対処できて、実力もあるし、仕事もできる。血筋的にも、先祖代々伝わるユグラウル家の教えを忠実に務めている医師に見えました。ホッサルの一番好きなところは、「病」に対して突き詰めて進んでいくところ。伝説や運という思考ではなく、根本的に見つめ直さなきゃいけない部分があり、「そこに絶対何か理由があるはずだ」と言いながら向き合う姿が、僕はすごく好きでした。

 物語が進んでいくと、そんなホッサルが、ひとつ大きな壁にぶつかるんですよね。そこからは、これまでかっこよかった彼の、ものすごく人間臭い面が見えてくるんです。まっすぐに泥臭く闘っている姿が、僕にはすごくかっこよく見えました。ホッサルの泥臭い面や人間性を見せられたら、と思いながらやっていたんです。そこを声で表現できたら、お客さんにも感情移入していただけるんじゃないかな、と思って作っていきました。

――ホッサルが壁にぶつかったときの竹内さんの声の演技は、わからないものと闘っているゆえの不安もちょっとある、という繊細さも表現されていたように思います。

 医師だったら、もしかしたら助かる可能性が低かろうと、患者さんがいたら絶対「助けます」と自信を持って言わなきゃいけないのかな、そういうことってあるんじゃないかな、と思ったんです。心の中でホッサルは、誰にもわからない、ものすごいプレッシャーや孤独と闘っているんだろうな、と。

 そういう気持ちが、ホッサルの出ている場面での息遣いやセリフの言い回しで見えると、すごく人間味があっていいかな、と思って作りました。だから、そこが伝わっていたら、すごく嬉しいです。

竹内涼真(たけうち・りょうま)

1993年4月26日生まれ。東京都出身。雑誌オーディションを経て2013年にデビュー。14年には『仮面ライダードライブ』で主演を務め、NHKの連続テレビ小説『ひよっこ』や『過保護のカホコ』(日本テレビ)などで一気に注目を集める存在に。21年には映画『太陽は動かない』で本格的なアクションに初挑戦、『17 AGAIN』ではミュージカル初挑戦、そして最新作『鹿の王 ユナと約束の旅』ではアニメーション声優に初挑戦など、演技の幅に広がりを見せている。また、2月25日(金)には『君と世界が終わる日に 特別編』(日本テレビ系)が放送。同日『君と世界が終わる日に Season3』がHuluにて独占配信スタート。さらにデジタル写真集「Place to Stand」が、Amazon Kindle、Reader Storeで発売中。公式Instagram @takeuchi_ryomaでは撮影時のオフショットなどものぞくことができる。

『鹿の王 ユナと約束の旅』

それでも、生きていく―

飛鹿(ピュイカ)に跨り戦った最強の戦士団<独角(どっかく)>。
その最後の頭であったヴァンは、強大な帝国・東乎瑠(ツオル)を相手に戦ったが敗れ、
奴隷となり岩塩鉱に囚われていた。
ある夜、ひと群れの不思議な山犬たちが岩塩鉱を襲い、死に至る謎の病<黒狼熱(ミッツァル)>が発生する。
山犬に噛まれながらも生き残ったヴァンは、一人の幼い少女ユナを拾う。
伝染する死に至る病――。
東乎瑠(ツオル)の民だけが病にかかると噂が広がる王幡領では、
天才医師ホッサルが、懸命にその治療法を探していた。
孤高の戦士と抗体を求める天才医師、出会うはずのなかった二人は旅に出る。
誰のために生きるのか。何のために生きるのか―。
しかし、世界に広がる謎の病の背後には、想像を絶する思惑と、過酷で雄大な自然、そして巨大な陰謀が渦巻いて
いた――。
世界を侵食する謎の病。
抗体を持つのは、孤独な戦士と一人の少女だけ。

出演: 堤 真一 竹内涼真 杏 ほか
原作:上橋菜穂子『鹿の王』(角川文庫・角川つばさ文庫 KADOKAWA 刊)
監督:安藤雅司 宮地昌幸
脚本:岸本 卓
キャラクターデザイン・作画監督:安藤雅司
主題歌:『One Reason』milet(ソニー・ミュージックレーベルズ)
アニメーション 制作: Production I.G
https://shikanoou-movie.jp/

全国映画館にて2022年2月4日(金)公開。

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2022.01.28(金)
文=赤山恭子
写真=佐藤 亘
ヘアメイク=佐藤友勝
スタイリング=徳永貴士