唯一無二の風貌と高い技術を兼ね備えた若き実力派

 NHK連続テレビ小説「おかえりモネ」の、気象予報士のマモちゃん(内田守)役が記憶に新しい清水尋也さん。彼が2022年1月21日(金)公開の映画『さがす』で演じているのは、指名手配中の連続殺人犯・山内照巳役だ。マモちゃんで彼を知った人は特に、その豹変ぶりに「これが役者か……!」と震えるに違いない。

 『渇き。』『ソロモンの偽証』で“恐るべき子供”として映画界に出現した清水さんは、唯一無二の風貌と高い技術を兼ね備えた若き実力派として、現場が途切れることがない。そんな彼が「原点回帰」と表現する山内役で出演した『さがす』は、間違いなく彼の代表作となる傑作だ。

 インタビューの冒頭に「ものすごく面白かったです!」と告げると、「ありがとうございます。知ってます(笑)」と誇らしさと嬉しさが混ざりあったチャーミングな笑顔を見せる。すべての質問に対して饒舌に、クレバーに、出し惜しみせずに語り尽くす清水尋也劇場がいざ開幕!

僕は“血まみれ”のイメージがあると思うけど

――『さがす』の山内は、一見普通の青年に見えますが、その正体はサイコパスのシリアルキラーです。オファーを受けたときにどう思いましたか?

 脚本が本当に面白かったので、「これは出ないと!」と即決しました。山内役に関しては、ものすごく印象的な役だなと。昔から僕を知ってくれている人には、僕は“血まみれ”のイメージがあると思うんですけど、最近、特にここ1〜2年で僕を知ってくれた人の僕に対するイメージは、爽やかな感じであったり、『東京リベンジャーズ』の不良の感じだと思うんです。

 だから今回の山内役は、自分の中では原点回帰的な意識がありました。昔から僕を知ってくれている人に「お?」と喜んでもらえるんじゃないかなと最初から思っていたので、いつも以上にグッと身が入りました。

――劇中で山内の生い立ちなどは語られませんが、どのように捉えましたか?

 監督とちらっと話した中で、漠然と「こんな感じで」というバックボーンを認識した程度です。この映画におけるシンボル的なキャラクターではあるので、不気味さや猟奇的な雰囲気が前面に出た方が面白いなと思いつつ、ラストに近づくにつれて、人間味のある部分を節々で意識しました。

――1つ1つのシーンが驚きの連続なので、映画を観る方の楽しみのためにも、ここで具体的に語ってもらえないのが残念です……。

 そうなんですよね(笑)。

2022.01.21(金)
文=須永貴子
撮影=鈴木七絵