立っているだけでドラマを感じさせる強烈な存在感と、ジェンダーレスなルックスで注目を集める板垣李光人さん。
人気メゾンの洋服に身を包み、ジッとカメラを見据える姿からは、もう少しで20歳の誕生日を迎えるとは思えない貫禄が感じられる。
40歳の売れない漫画家と22歳の美しいアシスタントとの、禁断の恋から始まる純愛を描いたサスペンスフルなドラマ『シジュウカラ』に出演。
18歳年上の女性を翻弄し、物語を思いもよらない深みへと導く難役は、「演じていて楽しい」と声を弾ませる。板垣李光人さんの新しい挑戦に迫った。
監督から「怖っ!」と言われました
――山口紗弥加さん演じる漫画家・忍のアシスタント、千秋役を演じてみての感想は?
実際に忍やその家族を前に演じてみると、台本を読んでいた段階よりも不気味というか。千秋の気持ち悪さやサイコな部分を感じています。
物語の序盤の千秋のキャラクターは“復讐”がテーマになっていて、大人に対する怒りや憎しみを抱いているんです。シーンごとに大九監督から演出をつけていただいたことで、「あ、こういう感じなんだな」とわかったところ。そこからは彼がどういう家庭環境で育ってきたのかが見えるように、自分の中で考えながら演じています。
――千秋のバックグラウンドの見せ方とは?
意外と最初から「おやおや?」っていう感じの雰囲気ではあると思います。例えば料理を食べるときに左手を出さずに食べたり、靴のかかとを踏んでいたり、歩き方も粗暴な感じを出しています。しゃべり方や雰囲気には柔らかさがあるんですが、ちゃんと親からしつけを受けていない感じがギャップとして出れば、違和感を持ってもらえるかなと。普段自分ではやらない行動ばかりなので、演じていて新鮮ですし楽しいです。大九監督には「怖っ!」って言われましたけど。
――どんなシーンで?
食事のシーンもそうですし、あとは間ですね。忍と会話をしているときに、何も言わずにじーっと見たり。会話の後も「何も言わずにそのまま帰っちゃったほうが気持ち悪いんじゃないですか」ということを提案したりしています。ただかっこいいとか、かわいいというだけで忍を引き込むのではなく、彼女の頭の中に違和感として千秋を植え付けたいなと思っています。
――忍を演じる山口紗弥加さんとの共演は?
もともとすごく強くてかっこいい女性というイメージがあったんです。実際にお会いしてみてもそこは変わらなかったのですが、さらに明るくてエネルギッシュでおもしろい方だったのが印象的でした。
物語自体は不倫ものですが、現場は作品のテイストとはまったく違って、すごく明るくておもしろいです。最近は忍の家での撮影が多いのですが、芝居をしていると部屋の壁がハリボテだったことを忘れちゃうので、山口さんも僕も、大体1日に1回はその壁を壊しています(笑)。
2022.01.07(金)
文=松山梢
撮影=深野未季
ヘアメイク=KATO(TRON)
スタイリスト=稲垣友斗(TRON)