人間の悪くて汚い部分を描いた作品に惹かれる
――ドラマの中では、ある作品が子どもの頃の千秋にとってお守りのような存在になっていたことが描かれます。板垣さんにとっても、何度も読み返したり、見返したりする大切な作品はありますか?
『ナイトメアー・ビフォア・クリスマス』は何度も何度も見ています。ティム・バートン監督の美的センスにはかなり影響を受けていると思っていて、他の作品もすごく好きです。最初に見たのは小学校低学年頃だったので、物語の内容よりも、ビジュアルにまず惹かれたんだと思います。
でも大人になった今見返してみると、完全にいい人が出てこない物語の内容も魅力的だと思いますね。子ども向けのアニメーションに思えるけど、ちゃんと人間の悪い部分を描いている。そこが、ティム・バートン作品のいいところだと思います。
――どうしてそういう作品に惹かれるのですか?
ふふふ。なぜでしょうね。いい人すぎたり、綺麗すぎるものを見ていてもあまり面白くないなって思っちゃうんです。別に歪んでいるわけではないんですけどね。ずるかったり、悪かったりするからこそ人間だと思うし、そういうグロテスクな部分があるからこそ、逆に美しさが際立つんだと思います。
――そういう意味では、不倫ものも共通する気がします。
そうかもしれませんね。ただ僕自身は、不倫がテーマのマンガやドラマを自分から手に取って見たことはまだないんです。
でも不倫がテーマの作品が人気な理由はわかります。きっと子どもたちが『ONE PIECE』に夢中になるのと一緒なのかなって。実際に願望があっても現実ではなかなか手を出せない。ある種、不倫ものもファンタジー作品として楽しまれている気がします。
2022.01.07(金)
文=松山梢
撮影=深野未季
ヘアメイク=KATO(TRON)
スタイリスト=稲垣友斗(TRON)