群馬県桐生市にある鳴神山を、モデルの吉岡更紗さんとともに歩く旅。山頂でパノラマ眺望と美味しいどら焼きを堪能した吉岡さんは、いよいよ今回の山旅の目的地へと向かいます。
目指すのは、幻の花・カッコソウの群生地。地元・桐生の本屋「ふやふや堂」の店主、齋藤直己さんの案内のもと歩く山道には、花が見られずとも心を満たしてくれる、初夏の瑞々しい景色と温かな気づきが待っていました。
» 赤城山を望む特等席と、どんぐりが教えてくれた初夏の表情
» 幻の花・カッコソウが繋ぐ、自然保護と未来へのバトン
» 沢の音に癒やされる林道ハイクと、山と街を繋ぐバックパック
赤城山を望む特等席と、どんぐりが教えてくれた初夏の表情
「実はね、今年は少し花の進みが早くて、もう見頃を過ぎてしまっているんです。今日はもしかしたら、お目当ての姿は見られないかもしれないけれど……」
山頂からリスタートする直前、齋藤さんからそんな「山の現実」が告げられました。一瞬、残念そうな表情を浮かべた吉岡さんでしたが、すぐに「それなら、隠れるように一輪でも健気に咲いている子がいないか、宝探しみたいに探してみましょう!」と、きらきらとした笑顔で気持ちを切り替えます。
登ってきた山道とは異なる、カッコソウの群生地がある椚田(くぬぎだ)峠を経由するルートを選び、坂道を下り始めました。
山頂から歩き出してすぐの場所に、小さな木製ベンチが置かれた見晴らしのいい展望台が現れます。眼前にどっしりと広がるのは、雄大な赤城山(あかぎやま)の姿。『上毛かるた』でも広く親しまれる群馬の名峰であり、地元で長く愛され続けるその美しい稜線を、遮るものなく一望できるまさに特等席です。
少しだけベンチに腰掛け、初夏の爽やかな風に吹かれながら、青い山並みを静かに眺めます。こうした何気ない寄り道も、せっかちな日常から離れた山の中だからこそ愛おしく感じられる時間です。
椚田峠へと続く道は、なだらかな尾根歩きが続く開放的な登山道です。登りで使用した駒形登山口からの直登ルートに比べると距離は長くなりますが、傾斜がとても緩やかなため、山の空気をゆったりと満喫することができます。
この歩きやすさから、こちらのルートを登りに利用するハイカーも多いよう。途中、元気に登ってくる中高年の登山者グループとすれ違いました。「こんにちは!」「いいお天気ですね」と自然に交わされる挨拶に、心がじんわりと温まります。
ふと足元に目を落とした吉岡さんが、おもしろい発見を教えてくれました。初夏の若葉に包まれた地面に、小さな茶色いどんぐりなどの木の実がいくつも落ちているのです。
「こういう木の実って、なんとなく秋にだけ見られるものだと思い込んでいました。この新緑の時季でも、森の足元にはたくさん落ちているものなんですね」
ただ通り過ぎるだけでは見落としてしまうような森の落とし物に気づけるのも、吉岡さんの豊かな感性があってこそです。
