“極妻”は何作目から観てもよい親切設計
◆極道の妻たち
編集K 私の最近の偏愛映画は、岩下志麻主演の『極道の妻たち』(A)、通称“極妻”シリーズです。最近、遅ればせながら東海テレビのドキュメンタリー映画『ヤクザと憲法』を観たり、『マトリ -厚労省麻薬取締官-』(新潮新書)を読んだりしていた流れで、荒々しい世界のコンテンツを欲していたんです。そんななか、“極妻”シリーズでまだ観ていない作品があったことを思い出して。自粛生活の始まりとともに、“極妻”をコンプリートするしかない! と。
編集T “荒々しい”からの“極妻”って発想、シンプルでいい! 余談だけど、『マトリ』の帯の著者の表情、良すぎません?
編集K 瀬戸晴海さん、激シブですよね。本も面白かった~。
◆マトリ
編集K “極妻”に話を戻すと、これはとにかく岩下志麻演じる“姐さん”に惚れる映画。気高く強く美しいビジュアルやひとつひとつの所作から目が離せないし、はっとさせられるようなパンチラインの嵐。
有名なセリフはいろいろありますが、強めの酒を一気飲みしたあとの「結構な御酒でおました」は、いつか飲み会で言いたい! 脇を固めるキャラクターも、全員個性が爆発しているし、笑っちゃうくらいの派手な見せ場が必ずあるから飽きることがありません。
編集T 「極妻10年、返り血も凄艶(つや)のうち」とか、映画ポスターのキャッチコピーもセンスが光っていますよね。
ある作品で岩下志麻の妹役だったかたせ梨乃が、別の作品では岩下志麻と殺し合う役だったり、おなじみのキャストでも毎回役柄が変わるのも面白い。そして、それぞれのエピソードが独立しているから、シリーズ何作目から観始めてもいいという親切設計。
◆疑惑
編集K そうなんですよ〜! 岩下志麻の魅力に撃ち抜かれた人には、野村芳太郎監督『疑惑』(A)もおすすめです。桃井かおりと岩下志麻が繰り広げる女同士のバトルが最高すぎ!
編集T 岩下志麻の白スーツに、桃井かおりが赤ワインをボトルからドボドボとかけるシーン、しびれますよね。好きな俳優が出ている作品は、ストーリーの面白さとか関係なく何回でも観ちゃう。
編集K ですよね。観るたびにまた新しい何かを発見して、誰かに熱く語りたくなる(笑)。
2020.06.13(土)
文=CREA編集部