●殻を破って参加した最新主演作

――そして、高校生活の3年間はイギリスへ留学されましたが、そこで学んだことは?

 本場のミュージカルや演劇、ほかにも美術館や博物館を通して、さまざまな芸術に触れることで、俳優としての感性を磨くことができたと思います。

 お芝居に関しては、日本との違いやお客さんの違いなど、深く広く知ることができました。

 いろんな人種、いろんな言語を持つ方たちが混在するなかで生活したことによって、教科書じゃ分からない世界の広さを体感しました。

 ドイツの強制収容所跡など、イギリス以外のヨーロッパの国にも研修旅行で行くことができたのも大きかったですし、それを何らかのかたちで芝居に生かせたらいいと思っています。

――久しぶりの主演映画となった『#ハンド全力』での撮影エピソードは?

 学校生活で、ずっと委員長や団長のようなことをやっていたので、「ベテランの方もいるなか、主役はどうあるべきか?」ということを意識してしまったんです。

 でも、それは撮影に入るまで。監督が「清史郎が殻を破って楽しむことが重要だと思っているから、一緒に楽しもう!」と言ってくださいました。

 醍醐(虎汰朗)くんも「気にしなくていいよ」と言ってくれたりして、どんどん殻を破っていった感じです。

 高校3年間もサッカーをやっていたので、チームプレイは慣れていましたし。

 とにかく、周りのみなさんの支えに助けられました。

――本作では、どんな新しい加藤さんが観られると思いますか?

 同世代のみなさんと熊本で、まるで合宿のように和気藹々と楽しんでいる姿はもちろんですが、僕の演じるマサオは受け身の芝居が多く、その相手によって、反応や見え方が違うキャラクターだと思うんです。

 僕自身も、その空間で感情の行き来を楽しみながら演じることで、改めて、お芝居が好きだと実感しました。なので、その点も観てほしいです。

●柔軟性のある役者になりたい

――将来の目標や今後の展望について教えてください。

 映像や舞台を問わず、ジャンルや役柄にとらわれず、今までやったことのない役をいろいろ演じたいと思っています。

 今は、サイコパスや殺人鬼といった役に憧れていますが、将来的には柔軟性のある役者として活躍できるように頑張りたいと思います。

加藤清史郎(かとう・せいしろう)

2001年8月4日生まれ。神奈川県出身。1歳1カ月で芸能界デビューし、09年、CM「トヨタ自動車」で演じた、こども店長で注目を浴びる。その後、映画『忍たま乱太郎』、ミュージカル『レ・ミゼラブル』などで活躍。そのほか、歌手や声優など、多岐にわたって活躍。

『#ハンド全力』

震災で離ればなれの親友・タイチ(甲斐翔真)とハンドボールをする写真をSNSにアップし、注目の的となった熊本在住の高校生・マサオ(加藤清史郎)。舞い上がったマサオと幼馴染の岡本(醍醐虎汰朗)は投稿を続けながら、つい廃部寸前の男子ハンドボール部に入部することに……。
【近日公開】
http://handzenryoku.com/
©2020『#ハンド全力』製作委員会

Column

厳選「いい男」大図鑑

 映画や舞台、ドラマ、CMなどで活躍する「いい男」たちに、映画評論家のくれい響さんが直撃インタビュー。デビューのきっかけから、最新作についてのエピソードまで、ぐっと迫ります。

2020.05.29(金)
文=くれい響
撮影=佐藤亘