●代表作となった『ケアニン』、3年ぶりの続編

――『ケアニン』は映画館での上映のほか、国内外で1,300回以上の上映会が開催され、多くの反響を呼びました。

 プロデューサーを中心に献身的に上映会を続けてくださっていることもあり、ほかの作品の舞台挨拶などで、地方に行ったときに、ご高齢の方や実際に介護職をされている方とに声をかけていただくこともあります。そのときは戸塚純貴ではなく、役名の大森圭と呼んでもらえるので、とても嬉しいです。

 先ほど話した、同世代の誰もがやっていない、自分にしかできないものが、この作品ならできるんじゃないかと思いました。

――そして、このたび3年ぶりとなる続編『ケアニン~こころに咲く花~』が公開されます。ふたたび、大森圭という役を演じることについては?

 1作目のときに、プロデューサーさんや監督から「メッセージ性の強い作品なので、この後も続けていきたい」という話を伺っていたので、「下手なものは作れない」と、身の引き締まる思いでした。

 また、大森圭にとっても大型介護施設である特別養護老人ホームで働くという新たなスタートから描かれているので、新しい気持ちで挑みました。

――現場で苦労された点はありますか?

 大森圭のブレない真っ直ぐさを大切にしながらも、できるだけ利用者の方のご家族との関係性や繋がりが映し出されるようにしたこと。

 また、今回担当する認知症の美重子さんは、ほとんど喋ることがない役柄だったこともあり、彼女の目や手といった些細な動きから、心情をつかみ取っていくお芝居が必要とされました。そこに関しても、かなり繊細に演じました。

2020.04.10(金)
文=くれい響
撮影=鈴木七絵