打ち合わせで飲み過ぎた!?
前代未聞のキックオフ

 途中まで、としたのは、打ち合わせ場所がトラットリアで少々飲み過ぎたのか、小関さんの体調が急降下し、まさかの途中退場となってしまったから(苦笑)。というわけで、計らずも「あとはお任せします」的にプロジェクトがキックオフとなりました。

 まず着手したのはクオリティを決定付けるアートディレクターのキャスティングで、真っ先に思い浮かんだのがデザイン事務所「白い立体」の吉田昌平さんでした。

 仕事仲間である複数の写真家から「自分の写真集を作るならこの人に」と名前を聞いていたアーティストであり、彼としてもちょうど雑誌「POPEYE」のアートディレクターに抜擢された直後で、「脂の乗った今の吉田さんとご一緒できたらいただけるものが大きいんじゃないか」という直感もありました。

 共通の知り合いでもあった写真家の前康輔さんを通じて改めて紹介してもらい、なんとか口説き、今だから言えますが、一度は「やっぱり時間が捻出できないかも」と断られもし(苦笑)、それでも最後は付き合ってくださった吉田さんには感謝しかありません!

 次にアプローチしたのは、フラワークリエイターで「edenworks」を主宰する篠崎恵美さんです。というのも、小関さんがまさかの途中退場となる前、私が持ち込んだ本の中にドライフラワーが差し込まれた一冊があって、それを見つけた彼が「かわいい!」と反応。そこで今回の写真集でも例えば押し花をインサートできないものか、可能性を追求してみようと思いました。

 「篠崎さんに!」とひらめいたのは、第一に2018年末の紅白歌合戦で話題を独占した米津玄師さんの鳴門からの生中継の際、ひょんなご縁から私もその場におりまして、ステージの宙に花のアンブレラ(傘)を生み出していくそのクリエーションに圧倒されたこと。

 第二に彼女がそうした撮影後や店で売れ残った生花を棄てることに疑問を抱き、それらをドライフラワーに加工し販売する活動をしていることにも親和性を感じました。

 お会いした篠崎さんも「やったことがないからこそ、ぜひやりたい」という極めてアーティストらしいスタンスをもって二つ返事で受けてくださり、幸運にも吉田さんと篠崎さんへの恋心を全うした形で(笑)、撮影の地フィンランドへ旅立つことができました。

 何より小関さんが「お二人ともご一緒したかった方々なので、本当にうれしい」と、二人の参加をつべこべ言うこともなく極めて大らかに受け止めてくれたことが大きかったと思います。

2019.11.26(火)
文=岡田有加(edit81)
写真(書影)=野口佳那子(OWL)