映画にテレビ、舞台と幅広く活躍する俳優、小関裕太。
彼の3rd写真集『Kiitos! Yuta Koseki in Finland〜Photography by Jun Imajo〜』がファンのみならず、本好きの間でひそかな注目を集めています。
Kiitos(キートス)とは現地の言葉で「ありがとう」を意味し、文字通りフィンランドを旅した小関を捉えた一冊。
その編集の背景と写真集に込められたメッセージを、編集・企画プロデュースした岡田有加さんが未公開カットとともに綴ります。
事の始まりは、春先に小関裕太さんを担当する企み上手な旧知のチーフマネージャーに「ところで、フィンランドに一緒に行きません?」とお誘いいただいたこと。
聞けば小関さんの誕生日である6月8日に合わせて、毎年、ファンに向けて何かしら企画を発信している。2019年はフィンランドで撮影した写真集を作りたいと。
写真家に関しては小関さんのカレンダーの撮影を通じて波長が合ったという今城純さんでいきたいのと、フィンランドというアイデアは今城さんからの提案があって、とのお話でした。
その時点で小関さんとは面識がなかったのですが、それが写真集のプロジェクトであるということに興味が湧きました。なぜなら編集者という職業柄、見本誌を送っていただいたり、仕事の資料として購入したりすることも少なくない役者やアイドルの写真集は数多くあれど、近年はコスト削減のためか編集的に似たり寄ったりで冒険しているものが少ない印象……。できあがったものがそもそも被写体のブランディングに最大限貢献できているのか。
デジタル時代に伴うペーパーレス化の余波で製紙会社の生産が激減し、印刷業界では紙の入手が困難な状況にもある今、「せっかく取り組むのであれば、少しでも長く手元に置いておきたいと思わせるデザインや物語を感じる写真集があってもいいのでは」という想いも。特に写真表現は、電子書籍より紙のほうが圧倒的に人間の目や身体との相性も良く、このジャンルの紙の表現には人の心を動かす可能性がまだまだあると感じています。
そこから「まずは本人と会いませんか?」ということで、自身の書棚から、装丁や紙、グラフィックデザインなどが印象的なアートブックを抜き取って、できる限りのサンプルを持って行きました。
初対面の小関さんは、今回の写真集のインタビューパートでも「写真を撮ることとか絵を描くこととか歌うことが趣味というより、いろいろな趣味をやること自体が趣味」と自らを語っている通り、トラベルやカルチャーはもちろん、他者への好奇心までが溢れ出ている青年で、役者さんに少なくない人見知りの気もなく、”途中まで”は嬉々と「冒険的な写真集」という提案に耳を傾けてくれました。
2019.11.26(火)
文=岡田有加(edit81)
写真(書影)=野口佳那子(OWL)