ロンドンと真狩村が共振する

1989年に発売された歴史的名盤。
1989年に発売された歴史的名盤。

 ソウルIIソウルの『club classics vol.1』である。キープ・オン・ムーヴィン! バック・トゥ・ライフ!

 試しに細川たかしのアルバムと並べてみる。

俺は今度、この6枚のアルバムをミックスしたプレイリストをSpotifyに上げようと思う。
俺は今度、この6枚のアルバムをミックスしたプレイリストをSpotifyに上げようと思う。

 ほら、全然違和感がない。細川たかしがソウルIIソウルに隠しきれないほどのシンパシーを寄せていたことが、これで完全に証明された。

 ロンドンと真狩村のグラウンドビートが、今、共振する。グラウンドビートだよ人生は。

 特殊な髪型というアピアランス上の戦略も、たかしがジャジー・Bのドレッドヘアから影響を受けたものに違いない。

 ……何言ってんだよ、細川たかしがそんな洋楽のダンスミュージックなんか聴くわけないじゃん。とか鼻で笑ったそこの若い衆、このジャケットを見ろ!

着物以外も似合うね!
着物以外も似合うね!

 このTシャツ、ルシアン・ペラフィネである。細川たかしは、かねてから欧米の最先端のカルチャーに精通しているのだ。ソウルIIソウルの存在を知らないはずがないではないか。

 もしも細川たかしに「細川さんにとってのルーツが真狩村であるように、ソウルIIソウルにとって音楽的ルーツのひとつとなる都市がブリストルですが……」なんていう風に水を向けたら、身振り手振りを交えてあの美声で小一時間ほど講釈を垂れてくれることであろう。

 ワイルド・バンチに始まり、トリップホップ、ドラムンベース、ダブステップへと至るかの地の音楽事情を仔細に説明し、さらには「実は私、バンクシーさんの正体を存じ上げておりましてね。こないだ、銀座のクラブで一緒に飲んだんですよ」なんていうセレブリティならではの衝撃告白まで行ってくれるに決まっているのだ。

 あのな、悪いけどな、髪型とか着物の柄とかが少しばかりユニークだからといって、日本レコード大賞を2年連続で受賞した歌謡界のレジェンドをなめんなよ! 謝れ!

 ……気がつけば、俺のPCの脇には、いつの間にかコンビニで買い求めたらしき鬼ころしの紙パックが3つほど転がっている。

おまけでこれも。
おまけでこれも。

 しかしまあ、このジャケットもすごいとしか言いようがない。私たちは、ファッショニスタとしての細川たかしに、もっともっと注目していかなくてはならない。

 とか何とかいい湯加減のことを書いて筆を擱く。次回は、あの大物演歌歌手のCDジャケットについて研究を深める予定。

 (右手の人差し指を前に突き出しながら)GSスタジオで、待ってます。

ヤング(やんぐ)

CREA WEB編集長。現在、弊サイト編集室では、仕事中に何の脈絡もなく突然「帝京平成大学のここがすごい!」と叫ぶのが流行っているよ。

Column

CREA WEB編集室だより

このコラムでは、CREA WEB編集室の日常を彩るよしなしごとを報告しつつ、CREAおよびCREA Travellerのプロモーションに励んでいきます。紀尾井町から、さわやかな風をあなたに。

2019.02.17(日)
文=ヤング
撮影=平松市聖