1980年代から1990年代にかけて流行した「セーターブック(SB)」を覚えていますか? 編み図と共に人気モデルや駆け出しの若手俳優が鮮やかで個性的なセーターを身にまとった写真実用書です。青春のほの甘い記憶と共に、SB愛好会の3人が今振り返ります!
セーターブックの元祖は
「いいとも青年隊」のあの人!
1月某日。我らが向かったのは東京・中野区にある、手芸の実用書でおなじみ「日本ヴォーグ社」。
セーターブック(以下SB)連載を始めるにあたり、実際に制作を手がけていたスタッフの方にお話を聞く夢のような機会に恵まれた。嗚呼、胸の高鳴りは止まらず。
今回、お話をうかがったのは日本ヴォーグ社事業本部 出版・企画開発部長の今ひろ子さん。
1980~90年代にセーター関連の実用書の編集制作を手がけていた方。ご多忙の中、我々の偏った愛情を受け止めて頂き、本当に感謝しかない。中野方面には足を向けて寝られない。
時は遡り、女性が趣味や習いごとに時間もお金も費やせるようになってきた1980年代半ば。
女性の趣味ランキングで編みものがトップであったこの頃は、並行して女性が恋愛に積極的になりつつある時代でもあった。
そこで、趣味として人気があった編み物の延長上に「家族や彼氏に何かあげたい願望」がプラスされ、男性に「手編みのニットをプレゼントしよう」という文化が流行し出す。
そのタイミングで1984年9月、日本ヴォーグ社から誕生したのが「セーターボーイ」なる手編みセーターの実用書だ。
前半は著名人(主に若い男子)がセーターを着用したグラビア、後半は実用的な編み図という構成になっており、どのような毛糸を使用すべきか、など、編みもの初心者にも優しい内容になっている。
「セーターボーイ」の表紙を飾ったのは、当時、初代いいとも青年隊として活躍中だった野々村真。
世の中の反応も好評だったということで、その後もこのシリーズは続くことになるのだが、当時、人気タレントを起用したきっかけについて訊ねた。
「1954年の創業当時からたくさんの実用書を手がけているのですが、初期の頃から俳優さんや女優さんに力をお借りしてモデルになっていただくことが多く、例えば、原節子さんや久我美子さん、石原裕次郎さんなどにも登場してもらいました。そういった背景があったので、新たに出版することになった『セーターボーイ』に人気の若いタレントさんを起用する流れも自然なことでした。よく見ると今も活躍している著名な方の姿を見つけることができますよ」
数冊の「セーターボーイ」を眺めてみるとそこには知ってる顔が! 名前も知らぬモデルが着用しているよりも、テレビや雑誌で親しみのある誰かが着ているほうが編み手としても親近感がアップするし、やる気も出そう。
そして、“編み物をしない単純なファン”の購入を望むこともできて、出版社にとってもメリットが。
その発想がその後、90年代に多数出版される、写真集的要素を大いに含んだ“冠本”(と呼ばれている)こと、書籍名に個人の名前が入った『●●●●が着るセーターブック』の誕生につながったのではなかろうか。
2019.02.13(水)
構成=水野春奈
撮影=深野未来、平松市聖