アクション大作の脚本家に
大抜擢!
――香港芸術発展局が主催し、ジョニー・トーが発起人となった若手映画作家養成コンペ「フレッシュ・ウェイブ(鮮浪潮)」で、11年に監督した短編『三月六日』(日本未公開)が最優秀脚本賞を受賞するなど、自主映画界で話題になります。
大学の課題として、何本か短編を撮り、卒業後に撮った作品が『三月六日』でした。後の雨傘運動(14年)に繋がる11年に起こった小規模なデモで、実際に100人以上の学生が逮捕されたんです。そのとき、署内で行われた事情徴収を舞台に、警官とデモ隊、デモ隊とデモ隊、お互いの認識の共通点やズレが見えてくるという会話劇です。そして、「フレッシュ・ウェイブ」の審査員の一人にベニー・チャン監督がいました。
――その出会いから、13年のベニー・チャン監督の映画『レクイエム -最後の銃弾-』の脚本に参加することになります。
『レクイエム~』はラウ・チンワン、ルイス・クー、ニック・チョンという3大スターが共演したアクション超大作。タイでの長期ロケもあり、今まで自分が手掛けてきた作品とは、キャストも規模も製作費も、何もかも違いました。しかも、依頼を受けたはいいのですが、“翌日に撮影するシーンの脚本を現場で書く”というスピードが求められました。これは香港映画ではありがちなスタイルかもしれませんが、僕が大学で学んだ脚本ありきのスタイルとはまったく違う製作現場。だから、緊張するような余裕もありませんでした(笑)。
――そして、翌14年には短編オムニバス映画『GOOD TAKE!』の一編を監督。本作で商業映画監督デビューを果たします。
フローレンスが書いた脚本を、本作のプロデューサーである俳優エリック・ツァンが気に入ってくれ、『GOOD TAKE!』を撮ることになりました。彼の息子であるデレク・ツァンはもともと出演する予定ではなかったんですが、予定のキャストがキャンセルになったことで、彼も参加することになり、それ以来、兄貴分として、いろいろサポートしてもらっています。僕は「映画とは観客に観てもらってナンボ」だと思っていたので、スタッフもキャストも全員プロのなか、商業映画を監督できたことはいい経験になりました。
2019.02.08(金)
文=くれい響