介護問題やうつ病など、現在の香港社会の問題を色濃く描き、年間興収第4位のスマッシュヒットを記録し、香港アカデミー賞の3部門を受賞した『誰がための日々』。
長編デビュー作にして、新人離れした演出が話題を呼んだウォン・ジョン監督が作品に懸けた想いを語る。
大学の講義を受けたことで
映画監督を目指す
――映画監督を目指すことになった、きっかけを教えてください。
もともとはグラフィック・デザイナーを目指していました。でも、それを学べる学部がある大学に入ることができず、香港城市大學に入学し、メディアについて学びました。そして、たまたま(ウォン・カーウァイ監督の師として知られる)パトリック・タム監督による脚本の講義を取り、そのとき映画の面白さや素晴らしさを知ったので、自分でも映画を撮るようになりました。
――もともと、映画には興味はあったのでしょうか?
じつはそこまで映画に興味がなくて、映画館に通ったり、作品を研究したりするような映画ファンではなく、1年に数本観る程度の普通の観客でした。家族もそんな感じだったのですが、たまたま自宅にジョニー・トー監督、製作の『暗戦 デッドエンド』『ロンゲストナイト』のDVDがあったんです。そのため、この2作だけは繰り返し観た記憶があります。
――監督の作品を手掛ける脚本家であり、私生活ではパートナーでもあるフローレンス・チャンさんとの出会いを教えてください。
彼女とは大学の同級生として知り合い、同じパトリック・タム監督による脚本の講義を受けていました。彼女がもともと脚本家を目指していたかは措いておいて、登場人物の作り方、捉え方、理性的なストーリーの組み立て方などから、彼女には当時から脚本家としての才能を感じていました。
2019.02.08(金)
文=くれい響