パイワン族の文化が
ちりばめられた宿
新興村で宿泊したのは、畑と海を見下ろす高台に立つ「吉廬夫敢藝文民宿」。
近代的な鉄筋コンクリート造りの一部にパイワン族の伝統的な石積み工法を取り入れた建物は、堂々としていて存在感あり。でも、壁に描かれたパイワン族のストーリーや歴史を記した絵は、カラフルで可愛らしく、どこか親しみが湧く。
パイワン族といえば、その民族衣装は台湾原住民のなかでももっとも装飾が多く、華やかだという。
お祭りでもないかぎり、村で民族衣装を目にする機会はないけれど、この宿の1階はちょっとしたギャラリーになっていて、衣装や昔の生活道具を見ることができる。
ふと、華やかな衣装や工芸品のなかに、カタカナが彫られた木の板が目に留まった。これは家系図で、日本統治時代に学んだカタカナを表音文字として使っていた頃の名残なのだそう。
ほかの原住民と同様、パイワン族は文字を持たなかったため、時折、こんなふうに、昔のもののなかに日本語を見つけることがある。
客室は、カラフルなパイワン族の衣装のデザインを反映しつつも、可愛らしい雰囲気。
おいしくて何杯も飲んでしまったのは、ウエルカムドリンクのローゼルティー。特産品のローゼルから作ったお茶で、美容にもいいのだとか。
「吉廬夫敢藝文民宿」のオーナーは鄔久子さん。代々、頭目の家系にある彼は、パイワン族独自の文化を残さなければと、この民宿を始めたのだそう。
トニー・レオン似の鄔久子さんは、ジェントルマンでとても知的。でも、ひとたび伝統衣装をまとうと一変、勇ましく、伝統を受け継ごうという情熱が伝わってくる。私はすっかりパイワン族のファンになってしまった。
どんなに暮らしが機能的になっても伝統を守り、自然と共存する台湾原住民の人々。この旅では、生きるうえでのヒントをたくさん得たような気がする。
台東を訪れて、ますます台湾が好きになっている。
吉廬夫敢藝文民宿
所在地 台東県金峰郷新興村1鄰8之1号
電話番号 886-89-782165
http://jilufugan.com/
Column
トラベルライターの旅のデジカメ虫干しノート
大都会から秘境まで、世界中を旅してきた女性トラベルライターたちが、デジカメのメモリーの奥に眠らせたまま未公開だった小ネタをお蔵出し。地球は驚きと笑いに満ちている!
2018.12.22(土)
文・撮影=芹澤和美
コーディネイト=Shon Feng