世界を旅する女性トラベルライターが、これまでデジカメのメモリーの奥に眠らせたままだった小ネタをお蔵出しするのがこのコラム。敏腕の4人が、交替で登板します。
第198回は、芹澤和美さんが台湾南東部にある台東を訪ねました。
海と山が織りなす絶景に感激
90年代後半から何度となく旅している台湾。雑貨店やカフェ巡りが楽しめる台北や、ごはんがおいしい台南も好きだけれど、ここ数年ですっかりはまっているのが、東部エリアだ。
その風景は独特で、幾重にもグラデーションを描く群青の海や、桃源郷のような豊かな自然は、旅するほどに魅了される。
何より魅力的なのは、原住民の美しい文化。
「原住民」ときくと、日本語の響きではワイルドな生活をしている人たちを想像してしまうけれど、台湾では正式な呼称。中国大陸から多くの漢民族が移住して来た17世紀以前から台湾に暮らしている先住民族のことを指す。
台湾全人口に占める原住民の割合は約2%で、政府が認定しているのは16部族。その多くが東部の台東県や花蓮県に暮らしている。
もちろん、ライフスタイルは、一般的な台湾の人たちと変わらない。だが、その一方で、独自の文化や芸術も守られている。
今回の旅の目的地は、台東県の金峰郷。
成田から台湾第二の都市、高雄まで飛行機で約4時間半、そこから高雄駅までタクシーで移動し、電車で金峰郷の太麻里駅まで約3時間。台北のような気軽さはないけれど、だからこそ、旅はワクワクする。
太麻里駅を降りてさっそく目にするのは、青い海と、ローゼルやライチが育つ緑の畑、その合間に点々と立つ原住民のカラフルな家々。
ちなみに、この駅のすぐ近くにある踏切は、漫画「スラムダンク」に登場する江ノ電の踏切によく似ていることから、台湾では人気のインスタスポットとなっている。
金峰郷には5つの村がある。嘉蘭村にはルカイ族が、新興村にはパイワン族が主に暮らしていて、独自の文化を観光資源として旅行者を受け入れている。だから、秘境のようで案外と、外国人でも旅がしやすい。
到着してまずは、ルカイ族の頭目が案内する1日集落探訪ツアーで、村の中へ。
2018.12.22(土)
文・撮影=芹澤和美
コーディネイト=Shon Feng