野菜ソムリエ探偵の登場を望む

速水 25年やったのはすごい。シリーズ開始時でおいくつの設定ですかね?

大野 初期の頃の市原さんって、髪の毛もクリンクリンのパーマで可愛くて色っぽかったですよね。シリーズ当初の市原さんの実年齢は、40代後半ですね。

速水 色っぽい感じは、わかります。伝わってました。

大野 猫を可愛がりながらも頭にはカーラーを巻いている。単発の2時間ドラマでも、市原さんが演じるヒロインって、年下の男といい感じになる役が多いんです。熟女ブームの先駆けみたいな。母性的なキャラと肉感的な感じをうまく演じる女優なんです。

速水 若い頃の清楚キャラとか「まんが日本昔ばなし」の人だったりしながらも女優としてはずっと色気を発していたと。そのへん、樹木希林さんとは違いますよね。

大野 市原さんが「女」を捨てなかったっていうのはその意味なんです。家政婦シリーズが女性に人気があった理由の一端には、そういった部分があったように思います。

速水 簡単には他の人に譲ることのできない役ですよね。その後米倉涼子さんがまったく違ったキャラで演じましたけど(2012年)。

大野 2時間ドラマは、世代交代をしないで来た。だから視聴者もスライドしていったんですね。

速水 2時間ドラマの女王のイメージのある名取裕子さん、片平なぎささんも見た目は恐ろしいほど変わらないですけど、その次の世代になると誰ですかね?

大野 森口瑤子さんとか、羽田美智子さんとかですか。とはいえその辺りの女優さんでも、僕と同年代なので50代ですね。

速水 その辺りがまだ若手として捉えられてる感じ。もっと新しい人気職業とかの開拓はできそうですけど、だめですか? ネイルアーティスト探偵とか。野菜ソムリエ探偵とか。

大野 そういう原作を書ける作家がいるといいんですけどね。そこです。

»talk05に続く

『2時間ドラマ 40年の軌跡』

著・大野 茂
発行 東京ニュース通信社
発売 徳間書店
1,500円+税

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大野 茂(おおの しげる)

阪南大学教授(メディア・広告・キャラクター)。1965年東京生まれ。慶応義塾大学卒。電通のラジオ・テレビ部門、スペースシャワーTV/スカパー! 出向、NHKディレクターを経て現職。著書に『サンデーとマガジン』(光文社新書)がある。

速水健朗(はやみず・けんろう)

ライター・評論家。1973年金沢市生まれ。TOKYO FM「速水健朗のクロノス・フライデー」などに出演中。近著に『東京どこに住む? 住所格差と人生格差』(朝日新書)、『東京β:更新され続ける都市の物語』(筑摩書房)など。