一冊の本が、ここのところマニアックなTVウォッチャーの間で話題を呼んでいる。その名は『2時間ドラマ 40年の軌跡』(東京ニュース通信社)。「土曜ワイド劇場」「火曜サスペンス劇場」をはじめとする2時間ドラマの歴史を、制作現場のスタッフによる証言や各局の内部資料などを用いて見事に掘り下げた快著だ。

 電通、NHKなどを経て現在は阪南大学教授を務める著者の大野茂氏と語り合うのは、2時間ドラマファンを自負するライター・評論家の速水健朗氏。さあ、「土ワイ」や「火サス」のディープな世界へようこそ!

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2時間ドラマのノウハウは死なない

速水 2000年代後半ぐらいからばたばたと人気シリーズが終了し、2時間ドラマも全盛期を終えた感じになってきます。とはいえ、2時間ドラマはなくなりはしませんよね。僕は最近でも「赤い霊柩車」シリーズとかは新作やってると観ちゃいますけど。

大野 消えることはないんです。とはいえ、火サスは2005年に枠がなくなり、土ワイもなくなったんです。火サスは当時終わるにあたって話題になりましたけど、土ワイが2017年に日曜に移ったことは、さほど話題になりませんでした。

速水 あ、それ知りませんでした。

大野 2時間ドラマを愛している方々も、さすがに日曜の朝から殺人事件は観たくないよとおっしゃっていたと。それで日曜の枠も今年でなくなったんです。

速水 2時間ドラマの最老舗が消えたのに、僕らはあまりにあっさりと受け止めてしまってますね。

大野 2時間ドラマは冬の時代ですけど、昨今はミステリの連続ドラマは、むしろ増えてます。これは2時間ドラマの制作のノウハウとか、女優さんたちの使い方なんかは、うまく活かされているということだと思います。「科捜研の女」に代表されるような。プロデューサーなんかは同じ人がスライドしてやっていたりするので。

2018.10.23(火)
構成=速水健朗
撮影=深野未季
写真=文藝春秋