険しく切り立つ断崖に守られて

 険しく切り立つ断崖によって守られたヴィルフランシュ・シュル・メールは、中世の名残が漂う小さな町です。

 古代ギリシャや古代ローマの時代から天然の良港として栄えたものの、5世紀に西ローマ帝国が崩壊し、侵略者にたびたび襲われる不安定な状態に。そこで人々は海から離れ、エズなど海抜の高い地へ移り住んでいきました。

 1295年、ナポリ王にしてプロヴァンス伯のアンジュー家のカルロ2世が、海近くに新しい町(Villam Francam)を建設。免税措置などの待遇で人々を呼び戻したのが、この町の名前の由来だそうです。

 町は海と並行して走る幾筋もの路地と、急な石段や坂道が、あみだくじのように入り組んだ造りになっています。

 細い路地を歩いていると、通りにテーブルを並べたレストランや、乾燥させたラベンダーを量り売りする店など、足を引き留める店が点在しています。

 偶然通りかかったレストラン「ラ・ターヴォラ」で目にした、地元の男性が食べていたフレッシュチーズのブッラータの塊と生ハム、ルッコラのサラダ。一度通り過ぎたものの、気になって折り返し、「あれを!」と指差しオーダー。やはり、戻って正解でした。

2018.07.14(土)
文・撮影=古関千恵子