世界を旅する女性トラベルライターが、これまでデジカメのメモリーの奥に眠らせたままだった小ネタをお蔵出しするのがこのコラム。敏腕の4人が、週替わりで登板します。

 第81回は、小野アムスデン道子さんが、南仏プロヴァンスの尽きせぬ魅力を綴ります。

マルセイユの新しい顔となった充実の博物館

ノートルダム・ド・ラ・ギャルド大聖堂に上れば、町が一望できる素晴らしい景観が広がる。

 フランスのプロヴァンス地方と言えば、輝く太陽の下に広がるワイン畑やラヴェンダーを思い浮かべる人が多いかも。実は、南は地中海に面していて、2013年に欧州文化首都にもなったマルセイユも含まれる。この港の都市から出発して、ロクシタンの工場やホテル、「フランスの最も美しい村」、ゴッホの滞在した町アルルやセザンヌのアトリエのあったエクス・アン・プロヴァンスと、南仏プロヴァンスらしい旅に出た。

ホテルからは、旧港側の古い町並みと美しくライトアップされた大聖堂が見えた。

 パリから飛行機だと約1時間半のマルセイユ。夜に宿泊先である旧港からほど近い「インターコンチネンタル マルセイユ ホテル デュー」に到着して、入り口から振り返ると、丘の上に光に照らされたノートルダム・ド・ラ・ギャルド大聖堂が美しい姿を見せていた。この大聖堂は、まるで町を見守るように立っている。

Intercontinental Marseille-Hotel Dieu
(インターコンチネンタル マルセイユ ホテル デュー)

所在地 1 Place Daviel, 13002 Marseille
電話番号 +33-4-1342-4242
URL http://marseille.intercontinental.com/

5分間で向こう側に渡れるフェリーボートは無料!
旧港の海岸沿いのプロムナードはゆったりとしている。

 ホテルが立つのは、17世紀の古い町並みがまだ残るマルセイユの旧港近く。朝起きて、海岸のプロムナードを散歩してみる。ブイヤベースの店、きれいに並ぶヨット、新鮮な魚の出店など見ながら、なかなか気持ちいいなと思っていたら、突然にちょっとびっくりするほどの勢いで風が吹いてきて、あわてて帽子を押さえる。「これが名物のミストラルだよ」とフランス人が教えてくれた。この日は海が泡立って見えて、向かい風に体ごと押し戻されそうな強さ。これは、体験の価値ありの南仏の洗礼だ。お陰で空は雲も飛ばされて真っ青に晴れ渡っている。

はるか向こうに見える岩窟王モンテ・クリスト伯の舞台になったイフ島も波に洗われている。

 2013年に欧州文化首都になったことから、再開発が一気に進んだマルセイユの新しい顔「ヨーロッパ・地中海文明博物館(MuCEM)」を見に行く。

網の様に見えるのは、鉄の繊維が入った圧縮コンクリートで、MuCEMの建築ために作られた素材。

 17世紀に建ったサン・ジャン要塞と橋で繋がった建物は、ガラスとコンクリートで作られた網の目が際立つ斬新な設計。展示内容は、地中海において農業、宗教から始まって、文明、社会が成立していく様を展示物やイメージで見せるという高尚なもの。要塞と博物館を結ぶ橋からの眺めはなかなかの見応え。

「ル・モル・パセダ」の料理。マッシュルームのスープに、野菜のグリエをオリーブオイルでマリネした料理などどれもおいしい。

 橋と同じ階にあるミシュラン3ツ星のシェフが監修するレストラン「ル・モル・パセダ」内には、ランチにヘルシーなブッフェを提供するカフェもある。ここで、ヒヨコ豆のペースト「フムス」やフェタチーズ(ヤギのチーズ)をのせて焼いたパイ、いろんな野菜のグリルなど、地中海の味をまず味わった。

Musée des Civilisations de l'Europe et de la Méditerranée/MuCEM
(ヨーロッパ・地中海文明博物館)

所在地 7 promenade Robert Laffont(esplanade du J4), 13002 Marseille
電話番号 +33-4-8435-1313
URL http://www.mucem.org/en/japanese

Le Môle Passédat(ル・モル・パセダ)
所在地 7 promenade Robert Laffont(esplanade du J4), 13002 Marseille
電話番号 +33-4-9119-1780
URL http://www.mucem.org/fr/votre-visite/la-cuisine-de-gerald-passedat-au-mucem

2015.04.14(火)
文・撮影=小野アムスデン道子