ゴッホゆかりのアルルの町には遺跡もいっぱい

ローマ時代の石造りの立派な闘牛場は今も使われている。牛を殺さないのがアルルの闘牛のローカル・ルール。

 フィンセント・ファン・ゴッホが暮らしたアルルの町。世界遺産でもある重厚なロマネスク様式の建物が並ぶ町の中心は、歩いて回れる。古代劇場や円形闘牛場などローマ時代の遺跡の規模が大きいのに驚く。石造りの円形闘牛場は、最上階は失われているものの、椅子などの部分を補修で加えて、現在でもまだ闘牛やイベントに使われている。

「カフェ・ヴァン・ゴッホ」の横には、今と変わらぬ風景をゴッホが描いた絵の看板がある。

 町をぶらぶらしていると、ゴッホの絵「夜のカフェテラス」のモデルになったカフェが「カフェ・ヴァン・ゴッホ」という名前で絵そのままに立っている。絵の中では、夜にカフェの光が浮かび上がって黄色なのだが、カフェそのものが黄色に塗られているのが妙にフェイク。

Café Van Gogh(カフェ・ヴァン・ゴッホ)
所在地 11 Place du Forum, 13200 Arles
電話番号 +33-4-9096-4456

「ホテル・ジュール・セザール」の華麗なるバー。さすがラクロワというデザイン。

 そう言えば、アルルの町で宿泊したホテル「ホテル・ジュール・セザール」(英語でいうところの“ジュリアス・シーザー”)も1930年に建った建物を、古代ローマ風の外観に仕立ててある。内装のデザインは、クリスチャン・ラクロワ。古代ローマをテーマに、これでもかというぐらい、華麗なるラクロワの世界が展開する。

Hôtel Jules César(ホテル・ジュール・セザール)
所在地 9 Boulevard des Lices, 13200 Arles
電話番号 +33-4-9052-5252
URL http://www.hotel-julescesar.fr/

こちらを静かに見ているカマルグの牛。レースの時は勇猛になる。

 その後、16世紀からの古い農場に1995年に出来たホテル「ル・マ・ドゥ・パン」にランチに立ち寄って、部屋や農場も見せてもらう。骨太の梁など素朴な感じの部屋はフランスの田舎家のよう。ここでは、カマルグレースという雄牛の角に付けたリボンを奪う競技用の牛を飼っている。角が横に張り出した威風堂々とした牛だ。このカマルグというのは、ローヌ川と地中海の間にできたデルタ地帯で、なんと野生のフラミンゴが飛来する。

Le Mas de Peint(ル・マ・ドゥ・パン)
所在地 Le Sambuc, 13200 Arles
電話番号 +33-4-9097-2062
URL http://www.masdepeint.com/

ホテルのディナーの前菜は、パイ皮の上にベルペッパーのソースと野菜のグリエがのって美しく、ヘルシー。

 プロヴァンスの旅、最後はセザンヌが自分で建てたアトリエで制作にいそしんだエクサン・プロヴァンスへ。再開発地区に1年前に出来たばかりの真新しい「ルネッサンス・エクス・アン・プロヴァンス・ホテル」に宿泊する。ここは、ビストロのシェフがミシュランの1ツ星を取った実力派だ。

Renaissance Aix-En-Provence Hotel
(ルネッサンス・エクス・アン・プロヴァンス・ホテル)

所在地 320 Avenue Wolfgang Amadeus Mozart, 13100 Aix-en-Provence
電話番号 +33-4-8691-5500
URL http://www.marriott.com/hotels/travel/mrsbr-renaissance-aix-en-provence-hotel/

セザンヌのアトリエは、日の光で満たされていた。

 ここから車で約20分ほどのところにセザンヌのアトリエがある。小さな一軒家の建物だが、天井高は4メートルぐらいある。セザンヌが静物画の題材にしたビンや器、そしてドクロ(本物!)やロウソクも置かれている。セザンヌは、これらを生と死の象徴と捉えて、その間にあるものを描こうとしたとか。大きな窓から入る陽の光が振り注いでいた。

 プロヴァンスで印象に残ったのは、やはりこの日の光かもしれない。晴れると、緑の間からの木漏れ日がまぶしい。次はラヴェンダーが大地を紫に染める時期に来てみたいと思わせる心地よい旅だった。

【取材協力】
フランス観光開発機構
URL http://jp.rendezvousenfrance.com/

マルセイユ観光局
URL http://www.marseille-tourisme.com/jp/

プロヴァンス・アルプ・コートダジュール地方観光局
ブーシュ・デュ・ローヌ県観光局
ヴォークリューズ県観光局

小野アムスデン道子 (おの アムスデン みちこ)
ロンリープラネット日本語版の立ち上げより編集に携わったことから、ローカルグルメや非日常の体験などこだわりのある旅の楽しみ方を発信するトラベル・ ジャーナリストへ。エアライン機内誌、新聞、ウェブサイトなどへの寄稿や旅番組のコメンテーター、講演などを通して、次なる旅先の提案をしている。
Twitter https://twitter.com/ono_travel

Column

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2015.04.14(火)
文・撮影=小野アムスデン道子