過酷さが売り物だった
ASAYANオーディション

メンバーは、左上から時計回りに、小湊美和、RuRu、信田美帆、稲葉貴子。画像は、このユニットにとって通算8枚目となったT&Cボンバー名義のラストシングル「HEY!真昼の蜃気楼」のジャケット。

 太シス結成のきっかけとなったのは、1998年の「つんくプロデュース芸能人新ユニットオーディション」だった。芸能経験がある女性が条件だったので、全員が切迫感と野心をムキダシにし、ピリピリギラギラが映像からガンガン出ていた。

 そんな空気のままサンフランシスコに行き「サンフラン」と「シスコムーン」チームに分かれて、いろんなライブハウスでパフォーマンスさせられてたなあ……。

信田美帆は、1988年のソウルオリンピックに日本代表の体操選手として出場している。この写真は週刊文春90年6月7日号に掲載されたものだが、当該記事は、朝日生命体操クラブの塚原光男監督(当時)が、信田をはじめとする3人の教え子が東京都高校体育連盟の横槍によってインターハイへの出場を拒否されたことを告発するという内容。昨今の伊調馨をめぐる騒動を彷彿とさせる。

 そして信田美帆(元オリンピック代表選手)・稲葉貴子(元大阪パフォーマンスドール)・小湊美和(民謡家元の娘)・RuRu(中国人歌手)の4人に決まった時は、正直心配しかなかった。

 失礼だが華のあるルックスメンがいない。なにより全員持ってるムードがバラッバラ。歌が抜群にうまい小湊と身体能力がスゴイ信田はともかく、個性が立ちすぎて団体行動無理そうなRuRuと、個性がイマイチ見えない稲葉はどーすんだぃコレッてなもんである。

 しかも、つけられたユニット名が「太陽とシスコムーン」。だだだダサッ。発表された時、小湊さんだったと思うが「『シスコムーン』は、オーディションでのグループの名前だったから愛着もあるんですけど『太陽と』ってなに?」とひたすら首をひねっていた覚えがある。多分視聴者の9割が同じ思いだったのではなかろうか。

 が、それをつけるのが、ザ・つんくセンス。そして「ダセェ」から「おおぅッ?」と前のめりにさせられるのも、これまたザ・つんくセンスなのである。

つんくの言葉遊びは本当にすごい。「Gottta Make It Love」を「ガタメキラ」と読みタイトルにしてしまう発想と思い切りのよさよ!

 そしていざ出た1stシングル「月と太陽」。あれを聞いた時の衝撃たるや!

2018.05.02(水)
文・撮影=田中 稲
写真=文藝春秋