これだけのアート性を発揮する
ホテルはココしかない

世界でもっとも美しいと思われるザ・レヴェリーラウンジは、インテリアデザインのトータルプロデュースを行う「ヴィジョネア」によるもの。このブランドがほかのブランドと肩を並べて仕事することがまず奇跡だ。オーナーの熱意が彼らを動かしたらしい。

 このザ・レヴェリーは、オーナーの“世界に誇れるベトナムのホテルをつくる!”という、強い意志と巨額の予算をもとに建てられたホテルだ。

 世界屈指のイタリアン家具ブランドの数々が、家具だけでなくコンセプトふくめ、その世界観を表現しているホテルともいえる。

各ブランドがそれぞれ担当したスイートの中で、いちばんシンプルシックなのが「ポルトローナ・フラウ」による、この「パノラマスイート」かも。それでも天井のスタッコ(化粧漆喰)や壁面のマザーオブパールなど、白だから目立たないだけで、きっちり主張している。

 ほんとに、実際、ありえない世界。各ブランドいずれもが強烈な個性と実力をもっているので、まず一堂に会すなんてことがありえない。

 かつ、それだけインパクトのあるブランドを、巨大とはいえホテルというひとつの空間にまとめてみせるという発想自体がありえない。

 で、驚くことに、みごとにまとまっているという……ザ・レヴェリーは濃厚で、濃密な素晴らしいハーモニーを奏でているのだ。

バスタブからの景色もこのホテルのセールスポイント。可能な限り広く大きな窓をとり、バスタイムを演出する。

「ジョルジェッティ」「ヴィジョネア」「ポルトローナ・フラウ」「プロヴァシ」……ふだん、お目にかかることすら稀な最高峰ブランドの家具に囲まれた客室。以前訪れたときは、全貌を見ていないこともあって“なんてグラマラスなホテルなの!”くらいの印象しかなかった。

 でも、完成したレヴェリー・ワールドに身を置くと、モダンなバロックの世界に踏み込んだような気持ち? いや禅の国、日本人からするともっとも近いのは日光・東照宮のような、もっと遡ると奈良時代の正倉院御物みたいな……。

 とにかく微に入り細に入り、スゴいのだ。

左:吹き抜け仕様の「レヴェリースイート」は圧巻。家具だけでなく、ドレープたっぷりのロングドレスのようなカーテン。オブジェひとつひとつにも存在感があって、はぁという感じだ。
右:同じく「レヴェリースイート」のバスルームの大理石のフロア。“美は細部に宿る”というけれど……細部に宿りすぎでしょう。

 超ゴージャスなホテルというのは、世界中どこにでもあるだろう。でも、ザ・レヴェリーほど質と美と趣味にこだわり抜いたホテルは、ほかに見当たらない。宮殿ホテルとて、ここまで凝ったつくりのホテルはないだろう。天井から壁面、床に至るまで、装飾されてないところがないという、圧巻。

 もう、びっくりなのだけど、決して装飾過多でヤとはならないところが、さすがの世界屈指ブランドたちのなせる技だ。

客室フロアのエレベーターホールは一見シンプルな静謐さに包まれているけれど、天井、壁面、床、カーテンに至るまで、凝りに凝ってるのが「ザ・レヴェリー」。

2018.01.30(火)
文・撮影=大沢さつき