ゲス不倫騒動多発の今こそ聴きたい
「LOVE(抱きしめたい)」
さて、ここまで「ジュリー時の過ぎゆくまま説」を好き放題書いてしまったが、実は、心の隅で「陰で超ストイックに自己管理してる説」も捨てきれない私である。
というのも、今回のツアーでは50周年にちなみ50曲、飛んで走って歌いっぱなしだというではないか。連日酒場でDABADAっていたなら、そんな体力残っているわけがない。
しかも彼の歌声。新曲「ISONOMIA」を聞いたが、衰えていないどころか深みを増している! 現在のぽっちゃり腹は、ビール腹でなく鍛え上げたオペラ腹ではなかろうか。そう思い直すほど、低音の迫力はものすごい。
ジュリーの低音が素晴らしい伝説の名曲といえば「LOVE(抱きしめたい)」。
この曲こそ今の彼の深く太い歌声で聞きたいベストワンである。声だけでなく、歌の世界観も現代社会にジャストフィット。
なぜなら「愛する女性は既婚者なので、彼女の社会的立場を考え抱きしめず別れる」というゲス不倫寸止めの美しく気高いドラマが展開されているからである!
今、許されぬ愛への一線を越えそうな殿方はぜひ聞いていただきたい。本当に愛しているなら「抱きしめ“たい”」で我慢する。それが真のサムライ。「抱いちゃった」じゃ遅いのサ……。ジュリーの声が甘く切なく、あなたの軽はずみな欲望を止めてくれるであろう。
なにやら話が飛びまくり、書いている私自身も混乱してきたが、結局言いたい事はただ一つ。
美しき過去も年取った自分もその大きな体に内包し、最高にロックなオッサンに進化を遂げた沢田研二。再ブームの風は、もうすでに吹いている。
ジュリーよ、いついつまでも「色つきの男」でいてくださいッ!
Column
田中稲の勝手に再ブーム
80~90年代というエンタメの黄金時代、ピカピカに輝いていた、あの人、あのドラマ、あのマンガ。これらを青春の思い出で終わらせていませんか? いえいえ、実はまだそのブームは「夢の途中」! 時の流れを味方につけ、新しい魅力を備えた熟成エンタを勝手にロックオンし、紹介します。
2017.08.28(月)
文=田中 稲
写真=文藝春秋