小栗旬が引っ張り出した
記憶の底の黒沢年男

「CRISIS 公安機動捜査隊特捜班」の制作発表会見での小栗旬(左)と西島秀俊(右)。2017年9月22日にDVD-BOXが発売。これまでアウトオブ眼中だった小栗旬のカッコよさにひれ伏すことに。(C)スポーツニッポン新聞社/時事通信フォト

 人の記憶の蓋というのは、本当に少しのきっかけでパカリと開く。そうなったらアイキャントストップ。再び好きの嵐が吹き荒れ、愛がJINJIN止まらなくなる。

 今回の「きっかけ」は、今年春クールに放映された激アツドラマ「CRISIS 公安機動捜査隊特捜班」であった。最終回が終わり、余韻でビタビタの私の脳内。

 そこに、なぜか急に小栗旬と西島秀俊を押しのけ、黒い革ジャンを着た黒沢年男が「思い出してくれてありがとうッ。俺たちザ・ハングマン!」と仁王立ちしたのである……。

「ザ・ハングマン」のTOPは「ボス」ではなく「ゴッド」! 神とあだ名されても何の遜色もない、山村聰の威厳の凄さよ! 1982年6月4日付朝日新聞夕刊より。

 80年代に一大ブームを起こした「ザ・ハングマン」シリーズ。指紋を変え顔を変え、戸籍を抹消した闇の仕置人が、悪事を働く者たちを「社会的に抹殺」するという、とてつもなくタフネスかつロンリネスかつテンダネスなドラマだ。

 「CRISIS」と設定は違うのだが、ダークで報われない空気感と小栗旬のクールエロな佇まいが、私の中のハングマンとマイトを演じた黒沢年男への思慕を引っ張り出したようだ。西島秀俊のニヒルさも初代リーダー・ブラック(林隆三)をどこか思い出させるッ。

 中年女性の妄想力とヤンキーのバイクは、一度走りだすと止められないのだ。このまま記憶の波止場までカッ飛ばすぜ……!

2017.09.26(火)
文=田中 稲
写真=文藝春秋