カウンターでいただく
“香り”高いスパイス・フレンチ

「ロブションにいた人がやっている隠れ家フレンチが新富町にできたんですよ、行きませんか?」

 それはよさそう。

 このとき惹かれたフレーズは“ロブション”ではなく“新富町”。「鮨 はしもと」や「味ひろ」といった開店早々人気の店をはじめ、今年の夏には話題になること間違いなしの天ぷら店もオープン予定と、このところ新富町が熱いのだ。

 その店は、繁華街から離れたタイ料理店の2階にあった。モミジドリ。通りから薄暗い小道に入り、細い階段を上がっていく。

看板も小さい、まさしく隠れ家だ。

 店内に入るとカウンターが6席。小さなテーブルも使えば8名入るというが、6名がちょうどのこぢんまりとしたスペース。

 “ロブションにいた”というシェフは、小島三生氏。「3年半だけですので」と奥ゆかしい。完全予約制で、2名からの一日一組限定でやっているという。

 アミューズは鴨のハム。スパイスたっぷりの生地とミャンという発酵ソースでいただく。食欲がわく酸味。シャンパーニュにも合う。

ワインは自然派のものを取り揃えているが、持ち込みも可能(持ち込み料金 2,500円)。

 ふとカウンターの中を覗くとそこには何十、いや百種を超えるスパイスの瓶詰が。これはなかなか面白いことになりそうだ。

 奥には小さなキッチン。次から次へとたたみかけてくる香りに2品目が待ちきれないなぁと思っていたところに、シマアジの燻製が運ばれてきた。黄色いビーツ(ゴールデンビーツ)から作られたソースが絶妙。

スパイスは、利かせるというより、うまく料理にとけこませているのが特徴。

 焼きたてのパンも来た。パンまで焼けるところがさすがグランメゾン出身だなと思う。

おいしくて、ついつい食べ過ぎてしまうから要注意。

 スープは驚きの一品が。その名も、蕪のスープ。米、リンゴ、レモンを使った斬新な味。野菜から出る蜜をそのままいただいている感じ。身体のなかから浄化されそう。

「器も食べられます」とシェフ。

 おっ、今度はキッチンから香ばしい肉の焼ける匂いが。台湾を代表する最高級高山茶、梨山茶でコンフィした豚タンは、ナイフがすっと入るやわらかさ。ほのかに香る茶葉とカリフラワーのソース。どれもがうまく調和している。

中国料理のエッセンスが入ったクリエイティブな味。

2017.05.15(月)
文・撮影=Keiko Spice