降りるべき港は島の反対側だった!

ディーゼル燃料を分けてもらった、ヴェスナさんと従弟のイヴォさん。

「旅の者ですが、ガス欠になりました。ガソリン、売ってもらえませんか?」

「ごめんね、ないのよ。力になりたいけど、何もできないわ」

「間違えました、ディーゼル車です。でも、ないですよね?」

「軽油なら、あるわよ」

 小屋からポリタンクを運んできて、ペットボトルを細工した漏斗で給油してくれました。代金を支払うと、お土産にトマトのおまけつき。

海岸線のみならず、こんな雄大な地形も。

 ふたたびドライブを開始し、フェリー乗り場のあるリゾート地、マカルスカに到着。

 ここで車ごとフェリーに乗ればよかったのですが、なぜか駐車場に車を置いて、スーツケースを引っぱりながら最終便でブラチ島へ。

“マカルスカ・リビエラ”と呼ばれるリゾート地。ブラチ島へのフェリーの発着地でもあります。

 夜の10時にブラチ島着。

 迎えのホテルのスタッフらしき人は見当たらず、他の下船客はばらばらと家路について、気付けば、夜の埠頭に一人きり……。不安になってホテルへ電話をすると、「迎えに行ったけれど、いないから帰ってきちゃったよ。今行くから、待っていて」。けれど、待てども、待てども、人がやってくる気配はありません。

素朴な港町のスマルティン。本来は中心部のスペタルへ行かなくてはならなかったのですが……。

 「あの、待っているんですけれど……」と、ふたたびホテルに電話。

 どうやら港が違うことが判明しました。宿があるのは中心地のスペタル、私がいるのは島の反対側の港町スマルティン。車で1時間ほど離れていて、迎えには行けないから、自分でタクシーをつかまえて来て、と。さすがに、夜の埠頭で流しのタクシーをつかまえる勇気はなく、泣く泣くキャンセル。

スマルティンで急きょ泊めてもらった民家。

 スマルティンは観光の香りがしない小さな港町です。ホテルらしき看板は見当たりません。通りに面したオープンテラスのバーにいた女性に、この辺にホテルはないか聞いてみると、「今から宿を探すの? うちに泊まる?」。ありがたく、一晩お世話になることにしました。

2017.01.28(土)
文・撮影=古関千恵子