目標は「出てきただけでスクリーンに緊張感が走る役者」

――劇中に登場する「エミアビ」として「M-1グランプリ」に出場し、無事1回戦を突破しましたが、当日の心境はいかがでしたか?(2回戦は2016年10月上旬より開始予定)

 前日までは自信満々だったのですが、やはり緊張しましたね(笑)。「M-1グランプリ」限定かもしれませんが、お笑いって、芝居と違って勝ち負けがあるというか、お客さんがウケるかウケないかというのがダイレクトに伝わるので、スリリングな体験でした。

――今後、俳優としての目標はありますか?

 まだまだ修業が足りませんが、北野武さんのような俳優になれたらいいですね。画面の横からチラッと登場しただけで、スクリーンに緊張感が走ったり、映画になったりしてしまうような。もちろん、武さんの映画に出たいですけれど、めちゃくちゃ緊張しそうな気がします(笑)。

――ちなみに、映画監督としては、どのようなタイミングで新作を発表していく予定でしょうか。

 『エミアビ』を経て、自分の考えがちょっと変わった感じがするんです。それまでは映画を作ることに焦っているみたいな部分があって、それが僕の芝居が伸びない原因じゃないかと、いろんな方からご指摘をいただいていたこともあるんです。『エミアビ』を経て、俳優としてもっとちゃんとやらなきゃいけない気持ちもあります。だから、今後は然るべきテーマや、自分の中で撮りたいものがちゃんと見えたタイミングで作ればいいんじゃないかな、と思ってます。

森岡 龍(もりおか・りゅう)
1988年2月15日生まれ。東京都出身。04年、映画『茶の味』でデビューし、『ハッピーフライト』『川の底からこんにちは』『舟を編む』、ドラマ『あまちゃん』などの話題作に出演。自主映画の監督としても活動し、『ニュータウンの青春』はPFFアワード2011エンタテインメント賞などを受賞し、劇場公開された。

『エミアビのはじまりとはじまり』
若手漫才コンビ「エミアビ」の海野(前野朋哉)が、想いを寄せる雛子(山地まり)と自動車事故で命を落とす。相棒を失くした実感を得られないまま、遺された実道(森岡龍)とマネージャーの夏海(黒木華)は自身の先輩で、雛子の兄である黒沢(新井浩文)の家を訪ねる。
(C)2016「エミアビのはじまりとはじまり」製作委員会
2016年9月3日(土)より、ヒューマントラストシネマ渋谷ほか、全国順次ロードショー。
http://bitters.co.jp/emiabi/

くれい響 (くれい ひびき)
1971年東京都出身。映画評論家。幼少時代から映画館に通い、大学在学中にクイズ番組「カルトQ」(B級映画の回)で優勝。その後、バラエティ番組制作を経て、「映画秘宝」(洋泉社)編集部員からフリーに。映画誌・情報誌のほか、劇場プログラムなどにも寄稿。

Column

厳選「いい男」大図鑑

 映画や舞台、ドラマ、CMなどで活躍する「いい男」たちに、映画評論家のくれい響さんが直撃インタビュー。デビューのきっかけから、最新作についてのエピソードまで、ぐっと迫ります。

2016.09.02(金)
文=くれい響
撮影=松本輝一