【WOMAN】
愛すべき、人と町並みと習俗。そぞろ歩いてみたい町ナンバーワン

 読破した者は気が触れるという触れ込みの夢野久作『ドグラ・マグラ』。だが、『江豆町』を100%理解した者もまた、錯乱状態に陥るのではないかと心配になるほど独創的で不条理な作品だ。

 江豆町という架空の町で起こる出来事がゆるやかにリンク。〈狼少年〉事件の取材のため、町に新聞記者が現れるが、外から来た唯一の存在によって、不可思議な町の全体像は少しずつ浮かび上がっていく。

 幕開けは、近所でも評判の好々爺だった甘木太郎の死体が見つかった場面。そのミステリーは早々に解決されるのだが、奇妙な真相は、町全体を包む謎のとば口に過ぎないので油断ならない。

 江豆町には名所も名物も風変わりな習俗もたくさんあるのに、住人たちが無自覚なのがこの町らしい。散策番組『じゅん散歩』のノリに近い触れ合いの人情話なのに、なぜいつも煙に巻かれた気持ちになるのかが知りたくて、再読、再々読必至。

『完全版 江豆町』(全1巻) 小田 扉

『団地ともお』シリーズで知られる著者の傑作が、完全版として復刊。月を眺めるだけの老人禁制の盆祭り、複雑なルールをものともせず町の人々が熱狂するゲーム「ドリームバリュ-」など、町のカルチャーひとつひとつにきちんと来歴があって、絵空事なのに説得力たっぷり。
太田出版 800円
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Column

男と女のマンガ道

男と女の間には、深くて暗い川のごとき断絶が横たわる。その距離を埋めるための最高のツールが、実はマンガ。話題のマンガを読んで、互いを理解しよう!

2016.08.05(金)
文=三浦天紗子

CREA 2016年8月号
※この記事のデータは雑誌発売時のものであり、現在では異なる場合があります。

この記事の掲載号

いまの47都道府県いいとこどり。

CREA 2016年8月号

日本のいいとこ、いいもの、おいしいもの!
いまの47都道府県いいとこどり。

定価780円