今月のテーマ「プラトニック・ラブ」

【MAN】
最大のからかいは、時おり真顔で「好き」と言うこと

 消しゴムの貸し借り、怖い先生の授業中に変顔、相合い傘、教科書に挟んだラブレター、背中ではなく顔を向かい合わせての背比べ……。中学2年生の西片くんが、隣の席の美少女・高木さんにからかわれる。“ただそれだけ”を描いた漫画がこんなにも胸ときめかされるのは何事か!

 小悪魔な高木さんからの「好き」のシグナルは、第三者から見れば明白なのだ。でも、西片くんは分かってない。からかわれていると疑って、もやもやぐるぐるのモノローグを繰り広げる。

 最大のときめきポイントは、接触がないことだ。1巻では2コマ、2巻も2コマ、3巻では7コマ。高木さんは手数たっぷりにちょっかいを出すのに、西片くんを触る場面はそれしかない。西片くんから高木さんにいたっては、最新3巻に1カ所あるのみだ。恋人同士じゃないから、「触らない」が普通だからこそ、「触る」がときめく。敏感になる。プラトニックって、むっつりどエロい。

『からかい上手の高木さん』(既刊1~3巻) 山本崇一朗

「冗談を言ったりいたずらをしたりして、相手を困らせたり、怒らせたりして楽しむ。揶揄する」(大辞林「からかう」の第1項)。中学2年生の高木さんは、隣の席の西片くんをからかっては「プクク」と笑う。授業中に、放課後に、夏休みに……。「ゲッサンminiプラス」他で連載中。
小学館 552円
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2016.05.05(木)
文=吉田大助

CREA 2016年5月号
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この記事の掲載号

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