今月のテーマ「○○してはいけない」
【MAN】
天才殺し屋にとっては「普通」が一番難しい
裏社会でファブル(寓話、伝説)の通り名で知られる天才殺し屋は、ボスから1年間の休業を言い渡される。これまで仕事を請け負いすぎてしまったため、ほとぼりを冷ますと言う。専属ドライバー兼助手だった女と「佐藤兄妹」になり、東京から大阪へ引っ越して一般人として生活することに。休業中に課せられた唯一絶対のルールは──殺してはいけない。
本人は普通の生活をしたいのに、その正体を知るヤクザ達がちょっかいを出してくる。裏社会にどっぷり浸かりすぎていたファブルは、常識を知らないがゆえの突飛な言動で、周囲に波風を立てる。そこにスリルが生まれ、ギャグが生まれる。登場人物達は真顔なのに読者は笑える、シリアスコメディの傑作だ。
しかし、最新6巻で、天才がついに動き出す。人を殺すのではなく、人を救う。そんなこと、彼にできるのか? 実はこの漫画、ひとりの無垢な男の成長物語でもあるのだ。
『ザ・ファブル』(既刊6巻) 南 勝久
ダウンタウンの特番風に表現するならば、「絶対に殺してはいけない365日」。天才殺し屋ファブルが一般人の身分を詐称して、大阪で普通の生活に精を出す。時給800円で初バイトもする! このまま映画にできそうな、キレキレのカット割りにも注目。『ヤングマガジン』連載中。
講談社 565円
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2016.09.05(月)
文=吉田大助