韓国人監督との絆

――最新作『ひと夏のファンタジア』は、韓国のチャン・ゴンジェ監督との出会いから始まった作品ですよね? 彼との出会いを教えてください。

 2010年に『イエローキッド』が韓国の全州(チョンジュ)映画祭に招待されたんですが、そのときに、すでにほかの映画祭でチャン監督と知り合いだった真利子監督に紹介されたんです。それで監督と仲良くなって、延泊して、監督の実家にも遊びに行く関係になりましたし、反対にチャン監督が東京国際映画祭で来日されたときはウチに泊まったり……。まったく壁がなくて、何でもウェルカムな人ですし、お芝居に対して求めるものがどこか似ているかもしれません。だから、作品どうこうよりも、先に個人的な付き合いの方が広がっていった感じです。その後、「なら国際映画祭」の企画として、チャン監督にオファーがあったときに「役が合えば岩瀬のことを使うと思うよ」という連絡があり、この映画に繋がりました。

――2部構成の本作で、岩瀬さんは前半パートではタケダ、後半パートではユウスケという2役を演じています。どちらも奈良県五條市の地元民という設定ですが、そのキャラの演じ分けについて教えてください。

 後半に関しては脚本がなくて、プロットしかなかったことも大きいと思うんですが、監督と話し合いながら、髪の長さだったり、日焼けしたり、見た目を変えようとか、喋り方の速度を変えました。ただ2人の設定は違うし、やることも違うので、芝居をするときは、場面場面で演じ分けるということを、あまり考えないようにしていました。真摯にやれば、結果演じ分けられるんじゃないかと。それに、第1章のタケダだったら、第2章のユウスケのように見知らぬ外国人に声をかけない。そういう性格のキャラクターである、と理由を後付けしていく感じでした。どの作品に関しても、僕は最初に自分の役はこういう性格で、こういうキャラで、みたいなことはあまり考えない。そればかり、考えてしまいそうですから(笑)。

――五條市での印象に残った撮影エピソードがあれば教えてください。

 撮影期間は2週間だったのですが、前半と後半の撮影のあいだに3日ぐらいのオフがあり、綺麗な吉野川でずっと日焼けをしていて、気持ちよかったですね。あと、ボランティアの方が毎日作られる手作りのごはん、名物の柿の葉すしとか、鮎がまるまる一匹入ったお弁当とか美味しかったです。

2016.07.08(金)
文=くれい響
撮影=佐藤 亘