【WOMAN】
不器用だけど母のように優しい
町田くんに誰もが首ったけ
のんびりすぎる性格の母に代わって、まめまめしく4人の弟妹(のちに5人に)の世話を焼く16歳の高校生・町田くん。賢そうなのは見かけ倒しで、料理はヘタだし、成績も赤点だらけ。町田くん自身、〈俺に得意分野なんてあるのかな〉と憂う。
だが、心ある人たちはわかっている。町田くんの優しさによって、本人さえ持て余すやっかいな部分を、まるごと肯定され、救われていることを。よかれと思って相手にぐいぐい踏み込んでいくところも、見返りなど求めず手助けしてしまうところも、実は、彼が鈍感でKYだから為せるワザ。考えてみればそれって、愛情たっぷりだけどちょっとお節介な“オカン”っぽい。
町田くんは5歳のとき幼稚園の先生にプロポーズしたことがあるのだが、理由は〈けっこんしたら、家族になれる〉から。イマドキ女子がいちばん求めているのは、何をやらせてもデキる器用さより、町田くんらしいそんな温かさだと思う。
『町田くんの世界』(既刊1~3巻) 安藤ゆき
成績は中の下で運動音痴、自慢できる特技もなし。普通に考えるとモテ要素を持ち合わせていない町田くん。だが、彼は人を分け隔てなく愛せ、そんな彼のことが周囲も大好きという美しい円環に拍手。彼にはこれからも、訳ありな級友・猪原さんのことを、母のように包んでほしい。
集英社 400円
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Column
男と女のマンガ道
男と女の間には、深くて暗い川のごとき断絶が横たわる。その距離を埋めるための最高のツールが、実はマンガ。話題のマンガを読んで、互いを理解しよう!
2016.06.06(月)
文=三浦天紗子