【次に流行るもう一曲】
LUV K RAFT「イミテーションゴールド」

これからのインディペンデントのあるべき姿

伊藤 2曲目も4月にデビューするLUV K RAFT。たまたま見つけたMVで引き付けられました。Youtubeなんだけど、あまり詳しい説明はなく、たぶん「THE CITY ON BLACK」って曲。これがイケてる。インディーズらしく低予算MVだけど、センスが光っているし、楽曲もカッコイイ。

山口 このバンド知りませんでした。かっこいいですね。

伊藤 3ピースのロックバンドなんですけど、彼らはビジュアル面のセルフプロデュースもしていて、これからのインディペンデントのあるべき姿という感じですね。手作り感が満載だけど、それこそが大人たちに飼われないという主張を感じる。特に映像に関しては、無駄に金をかけるよりは、抜群のカッコよさや想像をこえたアイデアなんかのほうが、ユーザーの目を引くことは間違いない。LUV K RAFTのMVはファッションとして良いイキり方をしている。

山口 最近、スマホで観ることを前提にした、縦長のミュージックビデオが話題になっていましたね。90年代生まれの6人組のヒップホップアイドルユニット、lyrical schoolの「RUN and RUN」という楽曲です(外部サイト)。ソーシャルメディアでは、動画とセットで音楽が広まりますから、楽曲だけではなく、ビジュアルも含めたプロデュースが、これまで以上に大切な時代になっていますね。

伊藤 それ観ました。LUV K RAFTとは違う、アイデア重視の映像ですよね。lyrical schoolの場合は、変化球アイドルとして面白いところに落とそうとしている感じはしますが、まだアーティストとクリエイティブのバランスが取れていない印象です。

山口 そうですね。日本のアイドルファンは、成熟度が高くて、クリエイティブを手掛けるプロデューサーの存在や、事務所の政治力まで加味しながら、贔屓のアイドルを応援するという独特の世界です。

伊藤 LUV K RAFTの場合は、インディペンデントとはいえギターの北野正人は活動休止中のday after tomorrowのメンバーだし、ベースでサポートメンバーの山川浩正は元THE BOOMのメンバーだし、メジャーを経験したメンバーがいるからこそ、この場所でこれが出来ているという納得感。そして、この尖りはメジャーでは出せないという確信犯。

山口 今回の楽曲をキッカケに知る人が増えると良いですね。

LUV K RAFT「イミテーションゴールド」
Little Kiddy Record 2016年4月20日発売
1,574円(税抜)
■LUV K RAFTは、KAREN、北野正人、KAZYAによる3人組。本作がCDの形態でリリースされる初のシングルとなる。マスタリングを行ったのは、テイラー・スウィフトなども手がけるトム・コイン。このCD収録の2曲に加え、3月に先行配信されたプレデビューシングル「プレゼント」も収めたカセットテープが特典として付く。
■「イミテーションゴールド」作詞/KAREN 作曲・編曲/Masato Kitano
■オフィシャルサイトURL http://www.fxxkyou.jp/

山口哲一 (やまぐち のりかず)
(株)バグ・コーポレーション代表取締役、コンテンツビジネス・エバンジェリスト、音楽プロデューサー。「デジタルコンテンツ白書」(経済産業省監修)編集委員。経済産業省「コンテンツ産業長期ビジョン検討委員会」委員。国際基督教大(ICU)高校卒。早稲田大学在学中から音楽のプロデュースに関わり、中退。1989年、バグ・コーポレーションを設立。音楽プロデューサーとしてSION、村上“ポンタ”秀一のマネージメントや、東京エスムジカ、ピストルバルブ、Sweet Vacationなどの個性的なアーティストをプロデュースする一方、音楽ビジネスとITに関する実践的な研究を行っている。プロデュースのテーマは、新しいテクノロジーの活用、グローバル展開、異業種コラボレーション。2011年頃から著作活動を始め、国内外の音楽ビジネス状況の知見を活かし、音楽(コンテンツ)とITに関する提言を続けている。エンタメ系スタートアップを対象としたアワード「START ME UP AWARDS」をオーガナイズし、プロ作曲家育成「山口ゼミ」や「ニューミドルマン養成講座」を主宰するなど、次世代の育成にも精力的に取り組む、異業種横断型のプロデューサー。近著に『新時代ミュージックビジネス最終講義』(リットーミュージック)、『10人に小さな発見を与えれば、1000万人が動き出す。』(ローソンHMV)、『最先端の作曲法 コーライティングの教科書』(リットーミュージック・共著)、『とびきり愛される女性になる。 恋愛ソングから学ぶ魔法のフレーズ』(ローソンHMV・伊藤涼との共著/「ラブソングラボ」名義)、『DAWで曲を作る時にプロが実際に行なっていること』(リットーミュージック)、『世界を変える80年代生まれの起業家 起業という選択』(スペースシャワーブックス)、『プロ直伝! 職業作曲家への道』(リットーミュージック)などがある。
Twitter https://twitter.com/yamabug
BLOG http://yamabug.blogspot.jp/
詳細プロフィール http://yamabug.blogspot.jp/2010/05/profile.html

伊藤涼 (いとう りょう)
音楽プロデューサー、ソングライター。「青春アミーゴ」などのミリオンセラーをプロデュース、後にフリーランスに。ソングライターとして、乃木坂46「走れ!Bicycle」、AKB48「ここにいたこと」などの作品がある。作詞アナリスト、フードミュージックプロデューサーとしても活躍。論理的で明晰な分析力に注目。著書に『作詞力 ウケル・イケテル・カシカケル』(リットーミュージック)、山口哲一との共著に『最先端の作曲法 コーライティングの教科書』(リットーミュージック)がある。
マゴノダイマデ・プロダクション http://www.mago-dai.com/
ブログ「伊藤涼の音楽」 http://ameblo.jp/magodai/
伊藤涼が主宰する作詞研究室リリック・ラボ 
https://www.facebook.com/lyric.laboratory/?ref=ts&fref=ts

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2016.04.14(木)
文=山口哲一、伊藤涼