音楽ビジネスとITに精通したプロデューサー・山口哲一。作詞アナリストとしても活躍する切れ者ソングライター・伊藤涼。ますます混迷深まるJポップの世界において、この2人の賢人が、デジタル技術と職人的な勘を組み合わせて近未来のヒット曲をずばり予見する!
さて、近々リリースされるラインナップから、彼らが太鼓判を押す楽曲は?
【次に流行る曲】
My Hair is Bad「時代をあつめて」
Jポップの常道を全く無視したスタイル
伊藤 今回は、この3rdシングルがメジャーデビューとなる新潟県出身の3ピースバンド、My Hair is Badの「時代をあつめて」。
山口 CREA WEBで「来月、流行るJポップ」を始めて、そろそろ3年になりますが、伊藤さんのニューカマー探索力がどんどん上がってきている気がします。
伊藤 このコラムのために新譜のチェックを常にするようになって“アーティストとの出逢い”という喜びを知ったんです。知ったというか、思い出したというか、セレンディピティってやつです(笑)。
My Hair is Badですが、前作シングル「一目惚れe.p.」はインディーズながらオリコン総合ウィークリーチャート18位にランクイン。昨年は全国各地で約170本のライブをして、多くの大型フェスにも出演、渋谷CLUB QUATTROなどのワンマンライブも成功させました。はじめて彼らのことを知った時、このバンド名にハートを穿たれた。ダサそうでカッコいい、英語的じゃなさそうで、すごく英語的な感じが“先行ってんな”って思いましたね。
山口 聴いてみたら、個人的に大好きでした。このバンドがいるのにチェックできてなかった最近の自分を反省しました。特に「戦争を知らない大人たち」のポエトリーリーディング的なアプローチはツボです。
伊藤 やばいですよね。オーディエンスからのニーズだけでなく、商業的な目的も含め今のJポップという形ができてきたんですけど、それを全く無視したスタイルの作品。アーティスティックでポエティックで、それでメジャーデビューなんですから底知れない可能性を感じた新人開発担当がいたんでしょうね。その人の気持ちがわかります。「戦争を知らない大人たち」を聴いて、久々にビリビリした。ずいぶん前のことだけど、The ピーズの「バカになったのに」を初めて聴いた時の感覚にトリップしました。
2016.04.29(金)
文=山口哲一、伊藤涼