マイケル・ジャクソン、ワム!をはじめとして、ポップミュージックの素晴らしさを布教する伝道師としても活躍するミュージシャンの西寺郷太さんが、新刊『プリンス論』を上梓しました。これを機に、80年代のシーンを席巻し、その後の音楽界に大きな影響を与えた5人のアーティストの魅力と功績を、プリンスとの関係性を軸に語ってもらいました。
vol.2 マイケル・ジャクソン (1958~2009)
『スリラー』の売り上げは1億500万枚以上!
プリンス最大のライバルと言えば、なんといってもマイケル・ジャクソンでしょう。
幼いころから兄弟で結成したジャクソン5の一員として活躍し、1982年12月にリリースしたソロアルバム『スリラー』は、当時全米チャート37週1位を記録。日本でもオリコン史上初の洋楽アルバムによるミリオンセラーを達成しました。このアルバムだけで現在までの総売り上げ枚数は1億500万枚以上。説明不要の“キング・オブ・ポップ”です。
マイケルも生まれたときから恵まれていたわけではなく、10人兄弟の8番目という、いわゆる「貧乏人の子だくさん」の家庭に育ちました。当時、お父さんはクレーンの運転手、お母さんはデパートのパートタイマーでした。そこからあれだけのスーパースターに自分の才覚だけで成りあがっていった彼は、戦後の日本人のように自分の力で成功して家族を食わせたいと必死になった最後の世代だったと思うんです。
今回紹介する『バッド』も、『スリラー』同様にいわずとしれた大ヒットアルバムです。
ただ、マイケルは前作『スリラー』超えを目標に制作しましたが、売り上げの面では残念ながら前作を超えられず、一部評論家からは失敗作とまで言われました。
2015.12.16(水)
文=秦野邦彦
撮影=榎本麻美