クジラを上手に撮影するコツ 番外編
「クジラに出会えなかった時のお楽しみ」

首里城の中の王座のひじ掛け部分の龍。守礼の門以外にも見所がたくさんあり、琉球王朝に想いを馳せることができる。

 ホエールウォッチングツアーに出かけてもクジラをきちんと見ることができない日もある。

 そんな時は、沖縄本島の街歩きやビーチも楽しんでもらいたい。首里城、識名園、国際通り、牧志公設市場など鉄板コースもいいけれど、ちょっと離島気分が味わえる浜比嘉島がオススメ!

浜比嘉島の集落の屋根の上には古いシーサーがたくさん残っている。どことなくクジラのような形のシーサー。

 本島と橋でつながっており、那覇市内から車で約1時間10分。気軽に行くことができるこの島には、昔ながらの集落と綺麗なビーチ、そして神様が住んでいたとされるシルミチュー霊場があるのだ。イザナギとイザナミの神話と同じように、ここにもアマミキヨとシネリキヨの神話があり、琉球の祖神としてここに祀られている。

 凛とした空気が漂う場所とだらりとしたビーチの呑気な感覚の両方を味わえる島。ここで何もない島に何かを見つけて写真を撮る工夫、被写体を見つける力を養ってみよう。

那覇市内で見かけた心温まる1カット。3月ですでに半袖姿。
夜になると野良猫が路地に出てくる。こんな瞬間はISO感度を6400ぐらいまで上げて手持ちで撮影。
何の変哲もない洗濯物干しも沖縄の強い光を浴びるとアートなシーンになってしまう。

 何もない日もあれば、突拍子もないことが起こる日もある。クジラ撮影はそんな人生のあり様を教えてくれる撮影でもある。

 しかしながら、クジラに出会えなくても、ちょっとした路地裏で出会った光景や、いつもと同じように沈んでいく夕陽が私の心を豊かにしてしまう沖縄って、不思議な場所だなあとつくづく思うのである。

沖縄に行ったらこれを必ず食べてね。ブルーシールアイスの紅イモ。
大きなクジラが撮れなくても、こんな小さな可愛い生き物が足元にいるから、クローズアップして接写してみよう。
夕陽の時間になったら「亀の甲せんべい」とオリオンビールを持って近くのビーチへ。これは私流沖縄の夕陽の楽しみ方(「亀の甲せんべい」とは、地元で買えるカメの甲羅の形をしたお煎餅。素朴な味に子供の頃を思い出す一品)。

 以上。次回は何のコツをお教えしようかと検討中。旅先の写真撮影でこんな時どうしたらいいの? など、取り上げてほしいテーマがあれば、CREA WEBの「掲載記事へのご意見・ご感想」フォームからご意見をお寄せください。

山口規子(やまぐち のりこ)
栃木県生まれ。東京工芸大学短期大学部写真技術科卒業後、文藝春秋写真部を経て独立。現在は女性ファッション誌や旅行誌を中心に活躍中。透明感のある独特な画面構成に定評がある。『イスタンブールの男』で第2回東京国際写真ビエンナーレ入選、『路上の芸人たち』で第16回日本雑誌写真記者会賞受賞。著書にひとつのホテルが出来上がるまでを記録したドキュメンタリー『メイキング・オブ・ザ・ペニンシュラ東京』(文藝春秋)、『奇跡のリゾート 星のや 竹富島』(河出書房新社)や東京お台場に等身大ガンダムが出来上がるまでを撮影した『Real-G 1/1scale GUNDAM Photographs』(集英社)などがある。また『ハワイアン・レイメイキング しあわせの花飾り』『家庭で作るサルデーニャ料理』『他郷阿部家の暮らしとレシピ』など料理や暮らしに関する撮影書籍は多数。旅好き。猫好き。チョコレート好き。公益社団法人日本写真家協会会員。

Column

山口規子のMy Favorite Place 旅写真の楽しみ方

山口規子さんは、世界中を旅しながら、ジャンルを横断した素敵な写真を撮り続けるフォトグラファー。風景、人物、料理……、地球上のさまざまな場所でこれまで撮影してきた作品をサンプルとして使いながら、CREA WEB読者に旅写真のノウハウを分かりやすくお伝えします!

2016.03.27(日)
文・撮影=山口規子