楽しそうに会話を弾ませる父と母
家に帰ると玄関で両親が待っていました。
「ほら、脱いだ、脱いだ」
言葉を発する前に手早く喪服の上着を脱がしてくる父。
「ご苦労様。どうだった?」
ニコニコと笑顔の母。
「え、いや、あの」
「どうもこうもないわよね! お風呂沸いてるから!」
Hさんはぼーっとしたままその日はすぐに寝てしまったそうです。
昨日の朝と変わらぬ翌朝の食卓。
やたら楽しそうに会話を弾ませる父と母。
鼻の奥にツーンとした違和感を感じたHさんは、席に座る前にティッシュを掴んで鼻をかみました。
鼻血が出たそうです。
それを丸めて台所脇の大きなゴミ箱に捨てようとしたとき、中に昨日着ていった喪服がむき出しのまま捨てられているのが目に入りました。
◆◆◆
Hさんはお昼になって実家を出ました。
しばらく車を走らせていましたが、どうにも我慢できず路肩に車を停めるや、妻に事の顛末をメッセージアプリで送ったそうです。
慰めて欲しかったのか、それとも一緒になってこの違和感を共有したかったのか。ハッキリとした望みはわかりません。
でも、妻から返ってきたのは、この一言だけでした。
『面倒事を押し付けるのが上手な家だもんね』
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Column
禍話
2016年からライブ配信サービス「TwitCasting」で放送されている怪談チャンネル「禍話(まがばなし)」。北九州で書店員をしている語り手のかぁなっきさんと、その後輩であり映画ライターとして活躍中の加藤よしきさんの織りなす珠玉の怪談たちは、一度聞いたら記憶に焼き付いてしまう不気味なものばかりです。









