食事の前に鳴るスマホ

「マリちゃんは今日どうだった?」

「いつもと変わらないかな」

「なら良かった。結菜はもう寝た?」

 Hさんは、運ばれてきたロールキャベツが食卓に置かれるよりも先に、妻からお皿をサッと取って自分の前に置きました。

「とっくに寝ているよ」

 プシュッ。

「結菜がおとなしい子で助かったよ」

 缶ビールを開けながら穏やかな表情で微笑むHさん。

 ブー、ブー、ブー。

 突然、食卓の上に置いていたHさんのスマホが鳴りました。

「んだよ、食う前に……」

【母さん】

 ブルブルと震えるスマホの画面に表示される文字を見ながら、Hさんは両親の顔をふっと思い出しました。

 今でこそ両親とは関係は悪くないと思っていたHさんですが、若い頃には息が詰まる思いもしてきました。

 彼の父は「あれをやれ、これをやれ」と、何をするにも一方通行な典型的亭主関白タイプで、母もそれに寄り添う言動ばかりが目立つ人でした。

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