和歌山県はアドベンチャーワールドへのパンダ再来を後押し

 アドベンチャーワールドと和歌山県もパンダの受け入れを望んでいる。和歌山県の岸本周平知事(当時)は2024年7月24日に成都パンダ基地を視察。岸本知事(同)は、県選出の国会議員を通じ、場合によっては外務省とのパイプも活用しながら、外交関係者に働きかけていく考えを示していた(参照:永明の返還後「パンダパパの跡継ぎ」求め和歌山県知事が訪中。気になる中国側の反応、母娘パンダの今後)。

 アドベンチャーワールドは、4頭のパンダを2025年6月28日(土)に中国へ送り出した。その前日にパーク内で開催したセレモニーでは、急逝した岸本氏の後を継いだ和歌山県の宮﨑泉知事が成都パンダ基地との協力にふれ、「和歌山県としても、この素晴らしい共同プロジェクトが継続されることを強く願うとともに、今後もしっかりと応援をしてまいります」と語った。会場には、成都パンダ基地や中国動物園協会の関係者、和歌山県や西牟婁郡の職員、白浜町長、自民党の二階伸康氏らも来賓として姿を見せた。

 中国の薛剣・駐大阪総領事も来賓として出席。日本語で「多くのファンの皆さんからいただいたメッセージ、その中に込められた、ぜひパンダがまた日本に戻ってきてほしいという気持ち。この気持ちは、中国にちゃんと届いております」「この願いを叶えるよう、微力ながら尽くしてまいりたいと思います」と述べると、会場から拍手が起きた。

 薛剣・駐大阪総領事は、神戸市立王子動物園で2024年5月10日に行われたタンタンの追悼式にも出席した。追悼式後の記者会見で、神戸市が引き続きパンダの飼育繁殖研究を望んでいることへの見解を問われ、「こういうお気持ちがあることは、しっかり承っております。これから相互の間で検討することになると思います」と日本語で答えた(参照:タンタンのおかげで「長生きできるパンダが増えるのでは」)。

 ただ、高市早苗首相の台湾有事を巡る発言を踏まえ、薛剣・駐大阪総領事が2025年11月8日(土)にXに投稿した内容(現在は削除済み)は日本で物議を醸している。

茨城県知事は茶色のパンダを視察

 パンダの誘致活動をしていた自治体は、仙台市などほかにもある。茨城県は2019年2月、日立市かみね動物園にパンダを誘致する方針を発表した。茨城県の大井川和彦知事らは同年11月に訪中。その際、中国人民対外友好協会から、陝西省との友好交流を提案された。パンダの生息地としては四川省が有名だが、実は陝西省と甘粛省も生息地だ。

 茨城県はその後、パンダ誘致の機運を醸成するため、「パンダフェス」を開催するなどしている。筆者も日立市からの依頼を受けて、2023年3月26日に市内でパンダについて講演した。講演前にかみね動物園へ行き、パンダ舎の建設予定地も見た。市内の店舗では、パンダをあしらった納豆やお菓子を販売していた。

 大井川知事は2025年4月19日(土)に陝西省の秦嶺四宝科学公園を訪れ、世界で唯一、飼育されている茶色のパンダ、チーザイ(七仔)などを視察。同日、陝西省西安市で趙剛・陝西省長と「友好県省関係の発展に関する覚書」に署名し、パンダの保護や経済などでの交流推進を確認した。

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