贈与から貸与へ

 中国側に支払う費用について補足すると、かつてパンダは中国からの贈与、つまり無償だったが、ワシントン条約の関係で、中国が「国外」とする国に送り出すパンダは、繁殖研究を目的とする貸与となった。中国国外で生まれた子どもも、所有権は中国にある(現在メキシコにいるパンダは、贈与されたパンダの子どもなので贈与)。

 貸与の場合、借りる国は、中国側との協定に基づき、中国での研究・保護活動を支える費用を中国側に支払う。相場は年100万ドル。アメリカのスミソニアン国立動物園は、2024年10月から飼育している2頭について、「中国国外でパンダを飼育・展示する他の動物園が毎年支払っている金額と同じように、年100万ドルを支払うことが協定で定められています」と公表している。

 日本の場合、神戸市立王子動物園と和歌山・アドベンチャーワールドにいたパンダは全て貸与、上野動物園のパンダは前述のリンリンまでが贈与だ。

 リーリーとシンシンの来日時、中国側に提供する保護資金は年95万ドルだった。石原慎太郎都知事(当時)は「5万ドル値切りまして」と2010年2月12日の定例記者会見で述べていた。貸与期間は、当初10年間だったが5年間延長された。延長後のこの数年間、金額について筆者は都に複数回、質問しているが、都と中国側との守秘義務が生じたため、回答を得られていない。

 神戸市が中国側に支払っていた保護資金は、王子動物園にタンタン(旦旦)とコウコウ(興興)がいた頃は年100万ドル、タンタンだけになってからは繁殖できないため年25万ドル(2020年の取材時点)。民間施設のアドベンチャーワールドは、金額について従来から明らかにしていない。

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