友達と行くロス旅行のために、父にプレゼン

近田 小学校から高校にかけて、両親との間に印象深いエピソードはある?

渡辺 とにかく、母は厳しかったですね。万事にハードルが高いんです。例えば夏休みの宿題とか、ちょっと見てもらうと、相当なレベルに達するまで許してもらえない。もう勘弁して寝せてください、小学生の体力ではこれ以上無理ですっていうほどのクオリティを要求するんです(笑)。

近田 すごいなあ。そりゃ大変だったねえ(笑)。

渡辺 そう。母は、加減というものを知らないんですよ。やっぱり、成功する人っていうのは違うんだなあと子ども心に思わされましたね。

近田 お父さんの方は?

渡辺 高校の時の春休みに、私は友人と二人でアメリカ旅行に行ったことがあるんですよね。私のおじとおばがロサンゼルスに住んでいて、友人の姉がマイアミ大学に留学していたから、そこに泊めてもらうことにしたんです。

近田 当時としては、結構、冒険的だったはずだよね。

渡辺 父親に、旅行の資金を出してもらおうと相談したら、「その旅の意味合いは何だ?」と問われた。「ディズニーランドとディズニーワールドが見たい」と答えたら、「それはやりたいことであって、テーマではない」と返された。

近田 厳しいねえ(笑)。

渡辺 女子高生2人でアメリカに行くのは、危険だしお金もかかる。そのハードルを乗り越えるには、しっかりとした意義がその旅行に込められていなければならないって言うんです。だから、ディズニーランドとディズニーワールドの比較やエンターテインメントとしての検証を行って、帰国後にレポートを提出しましたよ。

近田 すごい家族だね!

渡辺 何かを認めてもらうには、そこまですることが必要だった。まあ、とはいえ、旅費は全額出してもらってるんだから、甘いっちゃ甘いわけですけど。父には、何かにつけてものすごく鍛えられましたよ。

近田 大学に進んでからは、演劇への傾倒が長じて、ミュージカルに興味を持つことになるわけじゃない? 何かきっかけがあったの?

渡辺 小学生の頃、ミュージカル映画の『サウンド・オブ・ミュージック』と『ウエスト・サイド・ストーリー』を観て、これは、子ども向けの木馬座のお芝居とは違うものだぞと感じ、密かに心惹かれていたんです。

近田 木馬座ってのは、影絵作家の藤城清治さんが主宰した劇団だよね。カエルのキャラクター、ケロヨンが一世を風靡しましたっけ。

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