グッチやサンローランなどを擁するグローバル・ラグジュアリー・グループのケリングが、ケリング「ウーマン・イン・モーション」トークを開催しました。
去る11月2日、第38回東京国際映画祭にて行われた本トークセッションには、俳優の高畑充希、俳優・アーティストの中島健人らが出席。
是枝裕和監督がオープニングスピーチを務めたほか、キャスティング・ディレクターのデブラ・ゼイン、映画プロデューサーの福間美由紀も登場。映画界における女性の活躍について焦点を当て、それぞれの経験をもとにしたトークセッションが繰り広げられました。
2026年の第98回アカデミー賞®で「キャスティング賞」が新設
2015年、ケリングはカンヌ国際映画祭にて、表舞台と裏方で活躍する女性たちに光を当てることを目的とし、「ウーマン・イン・モーション」を創設。今年10周年を迎える本活動は、芸術の世界を作り上げる女性たちの多様な才能と声に光をあて、認知度の向上や正当な評価の獲得、影響力の強化に邁進している。
今回のメインテーマは「キャスティングの重要性」。トークに先立ち、現代のキャスティング・ディレクターの礎を築いた女性マリオン・ドハティ(Marion Dougherty)の功績を描くドキュメンタリー映画『キャスティング・ディレクター ハリウッドの顔を変えた女性』が上映された。
「彼女(マリオン・ドバティ)はキャスティングという仕事を作り上げた人です。伝説的な彼女の存在は非常に大きいです」と話すのは、『アメリカン・ビューティ』、『キャッチ・ミー・イフ・ユー・キャン』など、多くのヒット作にキャスティング・ディレクターとして携わってきたゼイン。
「この仕事は世界中の俳優の知識が必要です。最終決定は監督が担いますが、キャスティング・ディレクターの意見が作品に大きな影響を及ぼすこともあるんですよ。意見が食い違った時には、監督と喧嘩をするくらいのことも起こります(笑)」と自身の経験も交えて明かし、それらのエピソードに高畑や中島も興味津々の様子。
高畑は「自身で役を選ぶというより、役に選ばれるという感覚になることがあって。自分では合っているかな? と思う役でも、自分をよく見てくれる方が選んでくれた役だから、とチャレンジすると、そのことで自分自身の課題が見えたりします」と俳優としての感覚を交えて話し、ゼインに「人を見てキャスティングするときに、心がけていることは?」と質問を投げかける一幕も。
それに対しゼインは「役柄のことを考えていますね。すごく演技が上手でも、役とのマッチングが大事なので、これは意識した方が良いと思います」とアドバイス。
その言葉に続いたのが中島。「もし自分がゼインさんの作品に出るならどんな役が合うと思いますか?」と冗談交じりに投げかけると、「大学生の役かしら? 若く見えます。(笑)」とゼインもお茶目に返し、和やかなムードでトークは盛り上がりを見せた。
また、ゼインは、「アカデミー賞における『キャスティング』部門の創設は、ようやくその価値が理解されたのだと考えています。記念すべき年になると思いますし、どんな結果になるのかワクワクしています」と、2026年の第98回アカデミー賞®で「キャスティング賞」が新設されることを受け、期待に胸を膨らませた。
そんなゼインは、映画の中で描かれる女性像の変化について聞かれると、「時代を反映していると思います。女性がリーダーを果たす役柄や女性のヒーローなどが増えてきましたし、そういう機会はどんどん増していくと思います」と現状を分析。
中島も「『バービー』や『プロミシング・ヤング・ウーマン』など、女性が主体となって生き抜く力強さを描いた作品が増え、時代に順応した作品が作られているように感じます」とゼインの意見に同意。
一方、「本当の意味で、“人間”として平等に描かれている作品が観たいですよね。LGBTQの方々を描く作品も、当事者が演じるべき、という意見など色々あると思いますが……」と鋭い視点で切り込んだのは高畑。
ゼインも「良い質問ですね」と賛同しながら、「私は必ずしも当事者である必要はないと思っています。フィクションなのか、ドキュメンタリーなのか、その線引があいまいになる場合もありますが、上手い人が演じるべきです」とキャスティング・ディレクターとしての見解を述べた。
