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 2016年に連載が開始されるや否や、「婚外恋愛許可制」「セックスレス」など、踏み込んだ描写が話題を呼び、大きな注目を集めたマンガ『1122(いいふうふ)』。結婚とは何かを問いかける渡辺ペコさんの話題作がこの夏、ドラマ化されます。

 相原一子(あいはらいちこ)と二也(おとや)は結婚7年目の仲良し夫婦。しかしセックスレスで子供がいない二人は、夫婦仲を円満に保つため「婚外恋愛許可制」を選択する……という、これまでにない物語です。

 結婚している夫婦も3組に1組は離婚する時代。「結婚って何だろう」「いい夫婦って何だろう」――鋭い観察眼とユーモアで、現代社会に生きる私たちを取り巻く違和感を、丁寧にすくいとってきた漫画家・渡辺ペコさんにお話を伺いました。

※この記事は一部ネタバレを含みます

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マンガ『1122』第1話を読む
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1対1の関係で死ぬまで配偶者に縛られるというのは無理がある?

――連載当時、女性用風俗はまだまだ認知がなかったものの、この数年でそれなりに知られるようになってきたと思います。近年はスワッピングなどが作品の題材になることも。そうした社会の変化をどのように感じますか?

 本作がその走りだとはまったく思っていませんが、同時期辺りから、不倫(サレ妻)モノ、レスモノの作品が多く作られていったように思います。私は別に推奨しているわけではないですが、やはり1対1の関係で死ぬまで配偶者に縛られるというのは無理があるんじゃないかと考える人も増えてきているのではないでしょうか。

 夫婦間でも一回考えてみる価値はあると思います。なんせ今はみんな長生きじゃないですか。性的な関係を含め、婚姻のリレーションシップをどう長期的に運営していくか。そして婚姻というものをどう捉えて、どう向き合っているのかは、結婚前も結婚後も考えたほうがいいと思います。

――著名人の不倫は今でもワイドショーの一大トピックに挙がります。世間の不倫についてはどう考えたらいいのでしょう。大切な政治のニュースをふっとばしてまで熱心に報道する必要があるのか疑問に思うこともあります。

 1対1のパートナーシップに捕らわれない関係性をお互いに理解しあっているかもしれないし、夫婦間のことは第三者がとやかく言う必要はないと思います。ただ、私はテレビをほとんど見ないんですけど、ネットニュースで不倫の話題を見たらすぐクリックしてしまうし、やはりのぞき見するような、下世話心がくすぐられるものがあるんだろうなと思います。

 それに私も、たとえば家事や育児をパートナーに押し付けている人が不倫をしていると聞いたら、その人に嫌悪感を抱くかもしれません。これは夫婦間のパワーバランスや分担の問題でもあるのだと思います。お互いに同程度の経済力や自由度があるかどうかも気になります。相手のことを嫌だと思ったら自分から契約(夫婦関係)を解消しても大丈夫な場合と、そうでない場合とがありますから。

――結婚自体が女性のセーフティネットにもなってしまっている現状もあると思います。一方で本作では一子と二也の生活水準、役割分担が平等のように感じられました。そこに見やすさがあったのですが、意識はされましたか?

 私がこの漫画を描けたのは、一子と二也の生活水準やパワーバランスが同じぐらいだから。一子も思ったことを全部言えるし、強気でいられるというのがありますね。私はお互い健康で働いているとしたら、双方が仕事とは別に家事もやるべきだと思っています。これは好みの問題でもあるんですけど、まだ女性が家庭のことを担うことが現状多いと思うので、フィクションとして画を見せるときは、やっぱり男性が家事をしている場面を描いてみせるほうが私は落ち着くんですよね。そこは意識しています。

 それに役割として家事をやっている人と、あまりやらない人がいたとして、やらない人の方が浮気や不倫をすると、パートナーがよりかわいそうに見えちゃうじゃないですか。特に女性がそういうふうに見える場合、そこに経済的なパワーバランスがあるとしても、それは嫌だったんです。この物語では最初に二也が一子以外と関係を持つので、二也にはその分しっかり家事をしていてほしいなと思いました。

2024.06.29(土)
文=綿貫大介
写真=佐藤 亘