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見え始めた「伝統的な家族観に捉われない家族の形」

――本作のキーワードとして「夫婦の再構築」があります。よりよい夫婦関係を築くために必要なことはなんなのでしょうか。またペコさんの思う、いい夫婦の定義とは何だと思いますか?

 相性も大きいと思います。でも、理想かもしれないですけど、やはりお互いができるだけ成熟した状態で、きちんと敬意や信頼を持った上で話し合うことができるといいのかなって思います。対話って本当に時間とかエネルギーの余裕がないと雑になってしまうと思うので、自戒も込めてですけど、礼を尽くして相手を尊重できる関係だといいですよね。変な甘えが出てしまうと、すごくおざなりにしてしまうと思うので。

――敬意と信頼。どんな人間関係においても、結局はそれに尽きる気がします。

 そうですね。こと結婚になると、愛情やロマンスの結果として語られてしまいますけど、私は敬意と信頼の方をより大事にすべきだと思います。愛情って結構移ろいやすいし、気分や状況で変わったりするじゃないですか。でも敬意や信頼はそう簡単には壊れない。それが無くなるとしたら、そこには取り返しのつかない大きな原因が存在しているはずです。敬意と信頼をお互いに持てる関係性でいられるように努めることが大事だと思います。

――現在、伝統的な家族観に囚われない多様なカップル・家族の形が見えてき始めています。一子と二也の結末もそこにあるのかなと思いました。また、血のつながりや法的な関係はないものの「家族」のような深い絆を持ち、互いに支え合う「Chosen family」のようなコミュニティも海外では増えつつあります。

 私はこの漫画を描いたとき、従来の婚姻制度に縛られない家族というものがあり得るんじゃないか、ダメだと思っても再構築が可能な場合もあるんじゃないかとか、そういうところまでは考えたんですけど、拡張というところまではイメージが湧いていませんでした。

 私は今回、二人の関係というものすごく狭い世界の中でのことだけを描いていますが、実際に二人の人間が1対1で何十年も心身ともに本気で向き合っていくというのは、結構難しいことだろうなと思っています。だからこそ、関係性を拡張していく、ちょっと違う形を模索していくという選択肢もあるべきだろうなと感じました。そういうさまざまな関係性に溢れた世界をもっと見てみたいです。

2024.06.29(土)
文=綿貫大介
写真=佐藤 亘