常に話題作への出演オファーが引きも切らない小池栄子さん。その秘密はいったいどこにあるのでしょうか? 劇団☆新感線への出演が話題となっていますが、その大胆かつ丁寧なお芝居には圧倒されます。
後篇では小池さんが大事にしているお芝居へのマイルールや大きく意識が変わったという人生の分岐点についてお話してくださいました。キャリア形成を考える中で、結婚や出産に悩む女性は必見のインタビューです。
小池栄子に任せたら、「これが正解だった」と思わせる説得力のある芝居をしたい
――小池さんは今年45歳になられるとのことですが、劇団☆新感線では50代、60代の先輩方ともご共演されますね。今回ご一緒されることで、こんなふうに年齢を重ねたいと改めて思ったことはありますか?
これだけ長丁場の舞台をやり続けていることもすごいと思いますが、好きなことをやり続けられること自体がとても幸せなことなんだなと、先輩方を見ていて思います。
結婚式のときに村上龍さんにご挨拶をいただいたのですが、そのときに「好きなことを仕事にできることほど幸せなことはない。すでに君はもう幸せだから、それ以上幸せは望まなくていいよ」という趣旨のことをスピーチしてくださったんです。
好きでも続けられない状況に陥ったり、好きでもそれだけでは食べていかれないとか、そういう人たちもいる中で、“好き”を仕事にできている先輩方なので、それを改めていいなぁと思っています。
あと、これだけの信頼関係がある仲間に出会えている先輩方の人生が本当に羨ましいです。「集まって話していると、大学生の頃に戻ったよう」みたいなお話を伺うと、自分にはそんな人はいないですし、デビューの頃から一緒に仕事をしている仲間もいない。劇団っていいなと素直に思います。
――女優というお仕事を長く続けてこられて、この思いはずっと変わらない! という信念のようなものはありますか。
あざとい芝居はしたくない、とはいつも思っています。自分がこれ! というテクニックを持っているわけではないのですが、経験を積んでいくと「これくらいでいいでしょう」という、慢心というか、そういったものが絶対に出てくるんですよね。でも、絶対にそういったラクな道には行きたくないというのは新人の頃からずっと心に留めていますし、今でもそれが目標です。
――「ラクな道に行かない」というのは、具体的にはどんな感じでしょう。
初めてその役をやるはずなのに、勝手にカテゴリー分けをしてしまい、「この人はこういうタイプの人間だからこうやればいいでしょ」みたいにしたほうがラクなんです。どこかで観たことがあるような誰かの芝居の真似事みたいなことをやりたくなってしまうのですが、いや、この役はまだゼロで生まれたばっかりなのだから、私が作っていかないと! という気持ちをしっかり持つというか、ちゃんと向き合わないといけないと思います。
――そのような姿勢をお持ちだからこそ、いろんな現場に小池さんが呼ばれるんでしょうね。
そう思っていただければ嬉しいですね。ひとつの役があったとして、それをいろんな方が演じればその分パターンは出てくると思うのですが、それを「小池栄子に」と任せてもらったのだから、「この役ってこれが正解だったのかもね」と思わせるくらい役に説得力を持たせられたら一番嬉しい。そういう役作りをしたいと思います。
――ちなみに、そう思うようになったのは、これまでのお仕事の中で、何かきっかけや分岐点があったからですか?
たくさんありましたよ。他人から見られ方が変わった分岐点もあれば、自分の意識が変化した分岐点もあります。でも、大きく意識が変わったのは『八日目の蟬』という映画で出会った成島監督に“何となく”で芝居をしてはいけないと現場で叩き込まれたこと、ですかね。今みたいに理想を掲げていても、やはりどこかで気持ちが生ぬるくなって、小手先で芝居をしていた私に活を入れてくださいました。
そういう方と出会うと、その後、作品で関わることがなくてもどこかで見られているという意識が芽生えるんです。そうすると、「あの人に嫌われたくない」という思いがあるので、しっかり役と向き合っていこうと。今思えば、あの頃は調子に乗っていたのかもしれないと、そう思いますから。
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- 文=前田美保
撮影=榎本麻美
ヘア&メイク=山口公一(SLANG)
スタイリスト=えなみ眞理子 - INTERVIEWEE
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小池栄子
