とことん嫌なヤツという役柄に挑戦したい

――小池さんご自身は30代から40代を迎えたとき、そして現在、40代半ばから50代が見えてきたとき、それぞれ何か気持ち的に変化はありましたか?

 自分より年下の役者さんも増えてきたので、自分のための人生ではなくて、誰かのための人生を歩みたいという気持ちになってきました。犬を飼っているのですが、彼女たちのために健康でいようかな、とか(笑)。普通に考えたら犬のほうが寿命は短いですが、やっぱり彼女たちより先に逝ってはいけない! とかそんなふうに思います。

 あとはコロナ禍の頃にちょうど40代を迎えたので、それが大きなターニングポイントでもありました。「働くとは何だろう」みたいなことを、きっと皆さんも考えたと思うんです。そのときに愛犬の出産が重なったんです。それがすごく幸せで、命の尊さや生活って何だろうってすごく考えるようになって。

 それまでの私は本当に仕事がすべてというか……。今でも仕事は大好きですが、仕事の成功がイコール、自分の成功のように思っていたので、それは違うかも、と思い始めたのもその頃ですね。

――確かにコロナ禍ではあらゆる常識がひっくり返ってしまったので、色々と考えるタイミングになったと思います。

 本当に色々と考えました。子どもをいつまでに産むとか、高齢出産になっちゃうなとか、でもやりたい仕事もあるし、親の面倒はどうするのか、など……。身体と向き合わないといけないから、女性のほうが考えることが多いですよね。そういうものがあのタイミングで一気に来たという感じでした。

 もちろん、子どもを持ったら持ったで、周りは分かってくれると言われたこともありましたが、働く女性はある程度計画を立てるじゃないですか。私もそういう性格なので、自分が40代をどうやって過ごしていくかというのを考えるタイミングがちょうどコロナ禍だったんです。

 今は、ゆっくり休みも取りながら働けたらいいなという感じです。疲弊しないように、心を豊かに保ちながら、集中して仕事をするときはガッツリとやる。メリハリをつけた生活をしたいと思うようになっています。

――これから挑戦してみたい役柄はありますか。

 すごく“嫌なヤツ”をやりたいというのは、よく言っています(笑)。実は、それでもいいヤツという役はよくいただくのですが、最後の最後までただの嫌なヤツだったという、街を歩けば石を投げられるような役。

 実は以前、ある監督に「小池さんがやると、実はいい人なんじゃないかというふうに見えちゃうからそれを消してください」と本読みで言われたことがあったんです。そのときに、自分に足りないものはそこなんだなぁと改めて感じたんですよね。私自身は別にいい人じゃないのですが、克服すべきはそこだなと思ったので、ぜひやってみたいです。

小池栄子(Eiko Koike)

1980年11月20日生まれ、東京都出身。1998年にドラマデビュー。主演映画『接吻』(2008年)での演技が評価され、第63回毎日映画コンクール女優主演賞を始めとして、多数の賞を獲得。以降、映画では『八日目の蟬』『記憶にございません!』、ドラマでは『鎌倉殿の13人』『新宿野戦病院』などの話題作に出演し、幅広い役柄を演じてきた。2011年『髑髏城の七人』で劇団☆新感線に初参加。『ラストフラワーズ』(2014年)、『Vamp Bamboo burn~ヴァン!・バン!・バーン!~』(2016年)、に出演し、圧倒的な存在感と演技力で観客を魅了。シリアスからコメディまで幅広く演じる高い演技力に多方面から信頼が厚い。45周年記念公演『爆烈忠臣蔵~桜吹雪THUNDERSTRUCK』は久々の新感線出演となる。

2025年 劇団☆新感線45周年興行・秋冬公演
チャンピオンまつり いのうえ歌舞伎
『爆烈忠臣蔵~桜吹雪THUNDERSTRUCK』

出演:
古田新太 橋本じゅん 高田聖子 粟根まこと 羽野晶紀 橋本さとし/小池栄子/早乙女太一/向井理 ほか

【東京公演】 新橋演舞場
11月9日(日)~12月26日(金)